現行のハイエンドスマートフォンではUFS 4.1規格のストレージが採用されていますが、次世代となるUFS 5.0規格の策定が完了に近づいていることが明らかになりました。半導体の標準化団体であるJEDECによると、UFS 5.0は性能面で大幅な向上を実現するほか、消費電力の削減も達成するとのことです。
UFS 5.0の性能は現行の約2倍。PCIe Gen 5 SSD並みの速度に到達
JEDECが公開した情報によると、UFS 5.0の最大帯域幅は10,800MB/sに到達します。これは現行のUFS 4.1およびUFS 4.0が持つ5,800MB/sという上限値の約1.9倍に相当する性能になっています。また、レーンあたりの最大帯域幅は6,400MB/sとなっており、UFS 4.1のレーンあたり2,900MB/sと比較すると2倍以上の向上が見られます。
バージョン | 最大帯域幅 | 導入年 |
---|---|---|
UFS 1.0 | 300 MB/s | 2011年 |
UFS 2.0 | 1,200 MB/s | 2013年 |
UFS 3.0 | 2,900 MB/s | 2018年 |
UFS 4.0 | 5,800 MB/s | 2022年 |
UFS 5.0 | 10,800 MB/s | 2025年 (予定) |
この性能はPCIe NVMe Gen 5のストレージが持つ理論値にほぼ匹敵するもので、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスにおいて、従来では考えられなかった高速なデータ転送が可能になります。JEDECによると、UFS 5.0はスマートフォンやウェアラブルデバイスといった従来の用途に加え、車載システムやエッジコンピューティング、ゲームコンソールなどへの展開も視野に入れているとのことです。
互換性の確保やセキュリティー機能向上
UFS 5.0は、現行のUFS 4.0およびUFS 4.1と互換性を持つとされています。そのため、Snapdragon 8 Elite Gen 5やDimensity 9500といった2026年以降に登場するフラッグシップスマートフォン向けSoCでも、UFS 5.0ストレージを搭載できる可能性があります。ただし、これらのSoCがUFS 5.0の最大帯域幅を完全に活用できるかどうかは現時点では不明です。
なお、このUFS 5.0では読み書き段階でデータ改ざんを検知するインラインハッシング機能などセキュリティー強化に加え、電源供給のラインを分割する専用電源レール (Distinct power supply rail)など改良も施されており、現行のUFS 4.1より多くのデバイスでの使用に耐える機能が追加されています。
搭載製品は2027年以降に登場予定
UFS 5.0を搭載したスマートフォンが市場に登場する時期については、2027年が有力視されています。サムスン、Micron、SK hynixといった主要なNANDフラッシュメーカーもUFS 5.0の開発を進めているとされており、2026年第4四半期にはサンプル出荷が開始される見込みです。
そのため、2026年に発売されるフラッグシップスマートフォンにUFS 5.0が搭載される可能性は低く、実際の製品投入は2027年以降になると考えられます。なお、それまでの間にもUFS 4.0およびUFS 4.1のさらなる改良版が登場する可能性もあるとのことです。
UFS 5.0の登場により、スマートフォンでのゲームロード時間の短縮や、大容量ファイルの高速転送が可能になるほか、AIを活用したアプリケーションの動作においても性能向上が期待されます。実際の製品への搭載時期や対応機種については、今後の各メーカーからの発表に注目が集まります。
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