TSMC 3nmと5nmプロセスの来年分の生産枠がすべて埋まる。新たな半導体不足や値上げの火種に

TSMCの3nmや5nmは、コンシューマー向けからデータセンター向けまで様々な製品に採用されている製造プロセスですが、この2つの主力プロセスについて2026年生産分の枠が100%埋まる状態になることが明らかになりました。これらが原因で再び半導体不足や価格高騰などにつながる懸念が出てきています。

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モバイルとAI向けデータセンターがTSMCの先端プロセスの稼働率を押し上げ

台湾の工商時報によると、TSMCの最先端プロセスである3nmプロセスは、スマートフォン向けチップセットとしてQualcomm、Apple、MediaTekが製造に向けて大量の量産枠確保に動いているとのことです。また、AI向けやコンシューマー向けPCなどに使われるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野においては、AIブームを背景にNVIDIAが2026年以降発売予定のRubin GPUで採用するほか、AMDやIntelは同社の主力CPUにてTSMC 3nmを必要としている状態です。

また、上記の企業以外にもTSMC 3nmについては、Amazon AWSが開発するTrainium3など様々な企業がTSMC 3nmの採用を進めているとのことです。

TSMC 5nm以下は既に稼働率が100%に達する見込み。半導体不足や値上げなどの原因に?

サプライチェーン関係者によると、TSMCについては5nm以下のプロセスは非常に人気で、大手企業は競って可能な限り多くの生産枠確保に動いている状態とのことです。そのため、受注状況を踏まえると、TSMCが計画している2026年上半期の製造枠に対して既に100%近い注文が入っており、稼働率も100%に達する見込みとなっています。

ただし、この高い需要に対して供給が追い付いていないことから、生産枠を確保できなかった企業や計画以上に需要がある半導体製品については供給不足に陥る可能性があるほか、TSMC側も高い需要を背景にウェーハ価格の値上げなど価格調整を実施する可能性があるようです。

コンシューマー向けにTSMC 5nm以下を採用する製品は多め

TSMC 5nm以下で製造される製品は、コンシューマーからサーバー向けなど多岐にわたりますが、現在TSMC 5nm以下で製造されている、またはされる予定のコンシューマー向け製品の一例は以下の通りです。

TSMC 5nm以下を採用する製品(一部)
メーカー製品製造プロセス
QualcommSnapdragon 8 Elite
Snapdragon 8 Elite Gen 5
Snapdragon X2 Elite
TSMC 3nm
Snapdragon 8 Gen 2/3
Snapdragon X Elite
TSMC 4nm
AppleApple M3
Apple M4
Apple A17 Pro
Apple A18 /A18 Pro
Apple A19 /A19 Pro
TSMC 3nm
Apple M2
Apple A16
TSMC 4nm
MediaTekDimensity 9400
Dimensity 9500 (未発売)
TSMC 3nm
Dimensity 9300TSMC 4nm
IntelCore Ultra 200V (Lunar Lake)
Core Ultra 200 (Arrow Lake)
TSMC 3nm
Arc Battlemage (BMG-G21)TSMC 5nm
AMDZen 5
RDNA 4
TSMC 4nm
Zen 4
RDNA 3
TSMC 5nm
NVIDIAGeForce RTX 5000
GeForce RTX 4000
TSMC 4nm
ソニーPlayStation 5 ProTSMC 4nm

TSMC 5nm以下の製品は現行世代のスマートフォンやCPU、GPUなど採用例は幅広くなっていますが、これらプロセスの生産枠がほぼ埋まるとなると、特に新製品登場時には十分な供給台数を確保することが困難となったり、台湾での地震など災害により生産が一時的に滞るなどすればサプライチェーンが一気に崩れる懸念があります。これにより、2021年頃に見られたような半導体不足やそれらに伴う大幅な値上げにつながる懸念があります。

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この記事を書いた人

Kazukiのアバター Kazuki 編集兼運営者

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
自作PC歴は10年以上、経済などの知識もあるため、これらを組み合わせて高い買い物でもある自作PCやガジェットをこれから買おうと思ってる人の役に立てるような記事を提供できるよう心がけています。

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