Qualcommが10月に発表したSnapdragon 8 Elite Gen 5は、TSMC 3nmの改良版プロセスを採用することで性能と電力効率の向上を実現しています。しかし、この新プロセスの採用により、チップセット単体のコストは先代から約30%の値上げが実施されました。今後発売されるフラッグシップスマートフォンの価格大幅高騰が懸念されています。
Snapdragon 8 Elite Gen 5の供給価格は大幅値上げ。TSMC N3P採用が主な原因に
Snapdragon 8 Elite Gen 5は、先代のSnapdragon 8 Eliteの後継製品として2025年10月に正式発表されたスマートフォン向けチップセットです。コア構成は先代モデルと同様ですが、TSMC 3nmの改良版プロセスであるTSMC N3Pプロセスを採用しています。これにより、電力効率を犠牲にせず動作クロックを最大4.6GHzまで高め、性能の大幅向上を実現しました。
ただ、この新プロセス採用に伴い、チップセットの供給価格は先代モデルよりさらに引き上げられることが明らかになりました。
Snapdragon 8 Elite Gen 5は最大$280で供給。8 Eliteから27%の値上げ
Estimated cost to OEMs for flagship Snapdragon chipsets:
— Abhishek Yadav (@yabhishekhd) October 10, 2025
• 8 Gen 1: $120–130
• 8+ Gen 1: $120–130
• 8 Gen 2: $160
• 8 Gen 3: $170–200
• 8 Elite: $220+
• 8 Elite Gen 5: $240–280
Note: Industry estimates — actual pricing depends on OEM contracts and order volumes. pic.twitter.com/9g2ZfRjeNr
リーカーのAbhishek Yadav氏が各Snapdragon 8チップのOEM向け供給価格を公表しています。それによると、最新のSnapdragon 8 Elite Gen 5は$240~280で、先代のSnapdragon 8 Eliteの$220に対して約27%値上げされていることが分かりました。
この価格はOEM各社とQualcommが結ぶ交渉内容や発注数量によって変動します。しかし、安くてもSnapdragon 8 Eliteに対して10%程度の値上がりとなっており、DRAMやNANDストレージなど他のコンポーネントも値上げが予想されています。そのため、2026年以降に登場する同チップ搭載のフラッグシップスマートフォンは、現行モデル以上に価格が高騰することは避けられないと考えられます。
2nmを採用するSnapdragon 8 Elite Gen 6はさらに値上げ? サムスンファウンドリー採用が価格抑制のカギ?
Qualcommは2026年には、さらに製造コストが高いTSMC 2nmを採用したSnapdragon 8 Elite Gen 6の投入も予定しています。TSMC 2nmは3nmに対して20~50%のコスト上昇が見込まれることから、Gen 6ではチップ価格が$300を超える可能性が非常に高くなっています。
そのため、Qualcommもコスト低減のため製造委託先の多様化を図っています。その有力候補となるのがサムスンファウンドリーです。既に同社の2nm GAAプロセスを採用したSnapdragon 8 Elite Gen 5の評価を進めており、問題がなければサムスン製のGalaxy Z Flip 8などへの搭載が見込まれています。
仮にサムスンファウンドリーでの製造が実現すれば、TSMCに対して価格交渉を行うことも可能となるため、今後登場するチップセットの価格を抑制する上で重要な役割を担うと考えられます。
ただ、2nmプロセスは元々のコストが非常に高いため、仮にデュアルソーシング戦略を採用しても大幅な価格抑制は難しい可能性もあります。将来的に登場するスマートフォンの価格はさらに上昇していき、買い替えサイクルの延長や市場への影響が懸念されます。
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