サムスンを巡っては、社内でスマホなどを開発するMX部門がDRAM価格高騰を受けて、DRAMを製造するDS部門へ長期契約の打診を行いました。しかし、社内に融通するより社外へ販売した方が収益を上げられることから拒否されています。これを受けて、MX部門はMicronとDRAM供給を巡り近々協議を行うことが明らかになりました。
サムスンがサムスンを捨て、Micronと協議へ
韓国のサムスンは、DRAMなど半導体を製造するDevice Solution部門(DS)や、Galaxyシリーズなど同社のスマートフォンを製造するMobile eXperience部門(MX)など機能別に分かれています。昨今のDRAM価格高騰を受けて、コスト削減を狙うMX部門はDS部門へLPDDR5などのDRAMやSSD向けNANDの長期契約を打診しました。

しかし、DS部門はこの打診に対して、サムスンのスマホに供給するより外販した方が収益が取れるとして長期契約を拒否。外販の優良顧客と同じ条件の四半期単位での供給のみ受け付けることを通知したことが明らかにされています。
ただ、社内交渉の破綻によりGalaxyなどのスマートフォンではコスト低減やLPDDR5Xの供給などに相当苦労しているようで、CES 2026にてMX部門長がMicron CEOと会談を行うことが明らかになりました。
サムスンとの交渉破綻によりGalaxyシリーズのコスト低減が困難に
一般的にCESでは各社メディア対応など多忙のため、個別会談が行われることはあまりありません。しかし今回、サムスンCEO兼MX部門長のノ・テムン氏とMicron CEOのサンジャイ・メロートラ氏がCES 2026の期間中に会談を実施する方向で調整が進められているようです。
この会談では主にGalaxy S26シリーズ向けのLPDDR5Xの供給について話し合われる見込みで、価格交渉に加え供給量の確保に向けた交渉になると見られています。
ただし、これらの交渉は難航が予想されています。サムスンのDS部門がMX部門の要請を断ったように、LPDDR5XなどのDRAM製品の価格は大きく高騰している状態です。Micronも交渉の基準となる金額すら確定できていない状況で、サムスンとMicronの間で交渉がまとまらなければLPDDR5Xの供給が遅れる可能性があります。また、サムスンが高い価格で契約を結ぶ必要に迫られるなどの懸念もあるようです。
MX部門はGalaxyシリーズのコスト低減に苦慮。競争力にも影響
サムスンのMX部門はQualcommのSnapdragon 8 Elite Gen 5チップセット価格の大幅高騰に加え、今回のDRAMやNAND価格高騰など二重の負担を抱えている状態です。特に、QualcommのSnapdragonシリーズの採用比率増加により、2025年第3四半期のチップセットなど調達額は過去最高の10兆9,275億ウォン(約1.2兆円)に達しています。
そのため、サムスンはこの調達額を抑えるために自社開発のExynos 2600を積極的に採用することも検討されていたようです。しかし最新の情報では、このExynos 2600は韓国国内で販売される製品にしか搭載されないほか、ウェハー基準でもExynos 2600の初期生産量は月2万枚から1.6万枚に縮小されているとのことです。
これによりサムスンはGalaxy S26シリーズのコストダウンが困難になる見通しです。これに加え、DRAM/NANDの価格高騰により収益率の大幅低下や価格の値上げなど、競争力にも大きく影響する変更を加える必要が出てくると見られています。
サムスンはメモリからチップセットまですべて自社開発・製造ができるため、本来であれば価格競争力のあるスマートフォンが開発できる状態ではあります。
ただ、Galaxy S25シリーズではサムスン製DRAMやNANDを採用せず、すべてMicron製を採用するなど、同じ会社でありながらも部門間の関係性が良好ではなかった可能性があります。数日前に明らかになったMX部門とDS部門の交渉決裂により、MX部門はMicronに泣きついた形になっているようです。
なお、Micronも収益を上げることが求められるため、LTA(Long Term Agreement:長期契約)を結ぶ可能性は低いと見られています。四半期単位での契約となり、かつMX部門がDS部門に断られていることも明らかになっているため、調達価格を大きく抑えることは困難でしょう。そのため、2026年に発売されるGalaxy S26シリーズなどではこれらの価格を反映して値上げが懸念される状況にあります。



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