DDR5などの品薄が続く中、各量販店やメーカーの調達担当者がメモリ部品の確保に奔走していますが、サムスンの複数の社員と代理店関係者がメモリ関連部品の供給や販売を巡り不正なキックバックを受け取っていた疑いが浮上しました。サムスンが大規模な社内調査を実施していることが明らかになっています。
サムスン本社が台湾に調査員を派遣、複数社員を聴取
サプライチェーン関係者によると、サムスン電子本社は最近、複数の調査員を台湾に派遣し、半導体関連部門に対する内部調査を実施しているとのことです。調査は極秘に進められており、当初は組織再編ではないかと社内で動揺が広がったとされています。
連日にわたり複数の社員への聴取が行われ、シンガポールや中国の関係者も関与している可能性が浮上しています。サムスンは調査を経て営業およびマーケティング部門で人事異動を実施したとのことです。聴取は現在も継続中で、社内では詳細が厳重に管理されていることから困惑する社員もいるようです。
今回の疑惑は、特に需要が高いサーバー向けメモリの販売に関連しているとされています。供給が逼迫する中、一部の社員が代理店に対して在庫を優先的に回す見返りとしてリベートを受け取っていた疑いがあり、サムスン本社は重大な規律違反として厳しい姿勢で臨んでいると見られています。
サムスン電子の広報担当は「内部調査は通常の業務プロセスの一環であり、詳細についてはコメントを控える」と回答しています。
在庫優先の見返りにリベートか。メモリ不足が不正の温床に
今回の調査の背景には、グローバルなメモリ市場で発生している深刻な供給不足と価格高騰があると見られています。
サプライチェーン関係者によると、現在のメモリ不足はAI需要の爆発的な増加が主因とのことです。サムスン、SK Hynix、Micronなどの大手メーカーは収益性の高いHBMやエンタープライズ向け製品に生産能力を集中させており、DDR4やDDR5などの汎用DRAMやNAND Flashの供給が圧迫されている状況です。さらに、パンデミック後に各社が生産能力拡大に消極的な姿勢を取っていることや、DDR4の旧プロセスが急速に縮小されていることも供給逼迫を悪化させています。
この状況は少なくとも2027年まで継続すると見込まれており、メモリ価格は毎月上昇を続けています。納期も大幅に長期化し、サプライヤーの平均在庫は通常水準を大きく下回っているとのことです。
特にサーバー向けメモリは供給が極度に逼迫しており、在庫を確保した業者の利益率は非常に高くなっています。中国市場では2025年上半期から買い占めが発生し、代理店が大量の在庫を囲い込んだ結果、最近の放出で大きな利益を得ているケースが報告されています。
関係者は「現在はメモリが極度に不足しており、製品を確保できれば大きな利益が得られる状況にある。今回の事案は、こうした状況下で一部の社員がリベートという不正行為に手を染めてしまった結果だ」と指摘しています。
サムスンは韓国国内ではトップ企業であり、日本でいう三菱商事のような存在です。就活生にとって超人気企業で、給料水準もかなり高く設定されています。しかし、それでもこのような不正に手を出してしまうことから、調達側もなりふり構わず高額な予算を用意して在庫確保に走っていることがうかがえます。今後もメモリ価格はかなり高騰していく可能性が高いと言えそうです。
ただ、サムスンは調査中とはいえ、このような事案が発生してしまうあたり、巨大すぎるがゆえに内部統制が行き届いていないようにも感じられます。どのような不正だったのか、特に品薄が続くメモリ関連ということで、今後の進展に注目が集まりそうです。



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