TSMCの最先端プロセスにおける製造コスト上昇が、スマートフォン向けチップセット市場に大きな影響を及ぼしています。QualcommとMediaTekの両社は、TSMCが計画する2nmプロセスの大幅な価格引き上げを受け、一部製品の製造をSamsungへ移管する方向で検討を進めていることが明らかになりました。
QualcommとMediaTekが脱TSMCを本格検討?
TSMCは2nmプロセスにおいて、従来比で最大50%という大幅な価格引き上げを計画しています。この価格改定は2nmに限らず、既に採用が進む3nm世代の改良版であるN3EとN3Pについても影響が及んでおり、ウェーハあたりの価格がそれぞれ25,000ドル、27,000ドルへと引き上げられる見込みです。
こうした製造コストの上昇は、最終製品であるチップセットの価格に直結します。業界関係者によると、次世代フラッグシップチップであるSnapdragon 8 Elite Gen 5は最大280ドル、Dimensity 9500は最大200ドルと先代チップセットに比べて20%以上の価格が高騰する可能性があるとされ、スマートフォン本体の価格上昇も避けられない状況となっています。
採算性改善にはサムスン2nm GAAが現実的な選択肢に
こうした状況を受け、QualcommとMediaTekはサムスンの2nm GAA製造プロセスを代替手段として検討しています。Qualcommは既にサムスンと協力関係を構築しており、Snapdragon 8 Elite Gen 5の2nm GAA版を評価段階に入れていることが報じられており、将来的にサムスン製プロセス採用に向けた準備を本格的に進めていると見られています。
一方MediaTekはTSMC 2nmを採用したチップセットのテープアウトを完了し、2026年の製品投入を目指しているとのことですが、朝鮮日報によるとサムスンファウンドリー採用もTSMCの価格高騰を受け、検討対象に入り始めていることを明らかにしています。
ただし、サムスンの2nm GAA製造プロセスは現時点で歩留まりが50%程度にとどまっており、量産体制の確立には課題が残ります。それでも、TSMCの価格高騰を考慮すれば、両社にとってサムスンとTSMCのデュアルソーシング体制を構築することは、コスト管理とリスク分散の両面で合理的な選択と言えます。
サムスンファウンドリーの今後に期待?
今回の動きにおいて最も恩恵を受けるのはサムスンです。同社はファウンドリ事業の市場シェア拡大を目指しており、2nm製造プロセスの歩留まり改善に成功すれば、QualcommやMediaTekからの大規模な受注獲得につながる可能性があります。
しかし、サムスンは過去にQualcommのSnapdragon 8 Gen 1で歩留まりや品質面でよい評価を残せておらず、そのあとのチップセットでも度々採用に向けて候補に挙がるものの歩留まりや品質面でTSMCが選ばれてきました。

ただ、最新鋭の2nm GAAについては歩留まりはまだTSMCを下回っているものの、その進捗は前倒しで達成できているなど過去のプロセスに比べて開発状況も順調であり、TSMCの価格高騰も相まって特にコストに敏感なコンシューマー向けチップセットに関してはサムスンファウンドリーは各社にとって魅力的な選択肢になると共に、先端半導体において収益性などで大きく劣後していたサムスンが巻き返せるのか今後注目が集まります。
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