QualcommのSnapdragon 8シリーズは、ここ数年間は技術的なアドバンテージからTSMC製となっていました。しかし、Snapdragon 8 Elite Gen 5の一部はサムスンファウンドリーで製造される方向で協議が進んでいることが、Qualcomm CEOより明らかになりました。
サムスンファウンドリーにとって久しぶりの大型案件
サムスンのファウンドリー事業は、特に先端プロセスにおいて低い歩留まりを背景にここ数年間は有力な顧客がついていませんでした。自社のExynosですら歩留まりが原因で搭載機種が限定的になったり、ひどいときには開発されるも実装製品がなくお蔵入りとなるケースもありました。
しかし、現在サムスンが開発中の2nm GAAプロセスについては、課題だった歩留まりも大きく向上しています。そしてついに、悲願であったQualcommという大手企業からの製造委託に向けた協議が行われていることが明らかになりました。
Qualcomm CEOがサムスンの製造委託に向けた協議を進めていることを明言
Qualcommは2021年末に登場したSnapdragon 8 Gen 1において、サムスンの4nmプロセスで製造を行いました。しかし、歩留まりの低さや発熱、性能などが想定を下回る出来栄えだったため、異例となる投入半年でTSMC 4nmへ切り替えたSnapdragon 8+ Gen 1を投入しています。
この製品以降、Qualcommはサムスンファウンドリー採用の検討がリークなどで登場するも、毎回不採用となっていました。しかし、Qualcomm CEOのCristiano Amon氏がCES 2026のインタビューにて「複数のファウンドリ企業の中でサムスン電子と最初に最新2nmプロセスを活用した委託生産の協議を開始した」と述べました。さらに「近い将来の商用化を目標に設計作業も完了した状態」とも語り、サムスンファウンドリーでの製造決定が間近であることを明らかにしました。
なお、インタビューでは具体的にどの製品を製造するのかは明らかにされていませんが、過去のリーク情報から同社のフラッグシップチップセットであるSnapdragon 8 Elite Gen 5が製造されるとみられています。
TSMCより安価で一極集中の回避も狙い?
Qualcommは長らく同社の主力製品をTSMCへ製造委託していましたが、台湾情勢など地政学リスクへの懸念や、一社への依存による製造価格引き上げリスクを背景に、TSMC以外のファウンドリーでの製造も模索していたとみられています。
その中でサムスンは、北朝鮮問題はあるものの、中国との武力衝突といった地政学リスクが相対的に低いという利点があります。また、製造コスト面でも優位性があり、Snapdragon 8 Elite Gen 5が採用するTSMC N3Pはウェハーあたり約390万円といわれる一方、検討中のサムスン2nm GAAは約290万円と大幅に安価です。
TSMC値上げでサムスンに追い風
TSMCの製造コストは非常に高く設定されていますが、2029年まで毎年の値上げを計画しているといわれています。特にコスト面での制約が多いコンシューマー向け製品では、技術的優位性があってもTSMCの先端プロセスを採用し続けることは難しくなってきています。そのため、QualcommをはじめAMDなども、Zen 7など次世代CPUでサムスンの採用を検討しているといわれています。
なお、サムスンは今回の2nm GAA以外にも、8nmなどレガシープロセスではIntelや任天堂からNintendo Switch 2向けに受注するなど好調です。さらに半導体部門はメモリ価格高騰で収益性が大きく向上しています。これらの収益を原資にTSMCと競合する先端プロセス開発を進めていくとみられ、今後の展開に注目が集まります。
QualcommがSnapdragon 8シリーズをサムスンで製造するという話は何度も浮上していましたが、毎回歩留まりなどが理由で不採用となっていました。今回はついに実現に向けて動き出したようです。ただし、前回は歩留まり以外にも発熱面でTSMCより劣っていたため、Snapdragon 8 Elite Gen 5では同等レベルの性能が出せるのか注目されます。
また、この結果次第ではAMDなど他社からの受注も獲得できる可能性があります。先端プロセスにおけるTSMC一強状態に変化が現れるのか、各社の動向にも注目が集まります。



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