DRAM価格高騰は2026年以降、ノートPCやスマートフォンなどコンシューマー向け製品の価格に大きな影響を与えることが懸念されています。特にコスト面で利益確保が厳しいコンソールゲーム機においてこの影響は深刻で、2027年に発売が噂されていたPlayStation 6(PS6)について、発売が遅れる可能性が高まっていることがリークで明らかになりました。
PlayStation 6 (PS6)の発売は2028年以降に延期へ?
PS6を巡っては据え置き型と携帯機型ともに2027年秋頃に発売されると噂されており、すでにAMDと共同開発されるチップセットの仕様は確定し、テープアウト(設計完了後の製造工程への移行)も完了しているといわれています。そのため、これからは2027年の発売に向けた部品類の調達など量産準備が開始されると見られていました。
しかし、ゲーム業界で信頼性が高いリーカーのTom Henderson氏やKepler_L2氏によると、DRAM価格高騰の影響によりPS6などの次世代ゲーム機の発売は1年程度後ろに延期される可能性が高いとのことです。
DRAM価格高騰により販売に耐えられない価格になる可能性
Microsoft probably will. Sony is more likely to delay the PS6
— Kepler (@Kepler_L2) December 29, 2025
両氏によると、ソニーは2027年に計画している次世代ゲーム機の発売について、DRAM不足や価格高騰を背景に経済的に合理的な価格で量産ができるのか、また現時点で予定されている2027年発売を維持するのか延期するのかなど、さまざまな案が検討されているようです。
特にコンソールゲーム機は、発売時には販売価格に対してコストが占める割合が非常に大きいか、上回るケースすらあります。それらをゲームの販売やオンラインサービス利用によるライセンス費用で補い、ゲーム事業全体で収益を確保するというのが業界の通例でした。
しかし、現在見られているDRAM不足や価格高騰は、これまでの販売方法では赤字が出てしまうほどにコストが膨れ上がる見込みです。そのため、ソニーなどはDRAMの供給量が増えコストが下がる可能性があると見込まれている2028年以降にPS6発売を遅らせることを本格的に検討しているようです。
メモリー部分の高性能化が著しいPS6
PS6ではチップセットの性能が大きく向上しています。据え置き型にはゲーム用にZen 6cを8コア、OS管理用にZen 6 LPを2コア搭載した合計10コアのCPUを内蔵し、GPU側には52~54基のCompute Unit(CU)を備えたRDNA 5が最大3GHzで動作する設計になっています。携帯型はZen 6cを4コア、Zen 6 LPを2コアの合計6コアと、GPUにはCUを16基備える仕様になっています。
ただ、PS6では大容量メモリを必要とする近年のゲームに対応するため、メモリ仕様を大きく強化する予定です。据え置き型には160-bitのバス幅で3GBのGDDR7モジュールを合計10枚搭載し、メモリ容量は30GBを備える計画になっています。これは現行のPS5で用いられているGDDR6より高性能なモジュールを使用する上、モジュール枚数も8枚から10枚へと増加しています。
また、携帯型はメモリ容量こそ明らかになっていませんが、192-bitのバス幅でLPDDR5X-8533を搭載することは判明しています。そのため、3つのLPDDR5Xモジュールが必要になると見られており、据え置き型・携帯型ともにメモリ価格の影響を受けやすいスペックになっています。
特に、PS6が2027年発売という計画の場合、2026年からメモリを含めた部品類の契約や調達を進める必要があります。しかし、2026年はDRAM価格が高止まりしている時期であるといわれているため、このタイミングで契約をしてしまえば、PS6のコストは大きく跳ね上がることが確実視されます。そのため、DRAM価格が落ち着くという予測も立てられている2027年以降に部品調達を実施し、2028年以降に発売というスケジュールに遅らせられる可能性は高いといえそうです。
PS6は2027年発売に向けてチップセットの設計も済ませており、開発者向けにもPS5向け開発キットに携帯型PS6発売を見据えた設定を導入するなど、着々と準備が進められている様子が明らかになっていました。しかし、現在のDRAM価格では、発売しても消費者に受け入れられる価格帯で販売することはコスト的に厳しいことは明らかです。
また、PS6などコンソールゲーム機は発売時にかなりの台数が売れるため、DRAMを含めた調達の規模は大きくなります。2027年発売となるとDRAM価格が高止まりしている2026年頃に調達契約を結ぶ必要性があるため、ソニー側にかかる負担はさらに大きくなり、PS6全体のライフサイクルで見ても収益率が大きく悪化する懸念があります。遅らせるという選択肢は合理的といえます。
ただ、すでにチップセットが完成していることや、PCに近い性能でコスパが良いというPlayStationの売りを活かすには、長くても1年の延期が限度といえます。そのため、もし市場の読みが外れてDRAM価格高騰が2027年以降も続いた場合、PS6は高コストでも利益がギリギリ出せる価格に設定される可能性がありそうです。
何はともあれ、早くDRAM価格が落ち着いてほしいところです。



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