2025年6月に発売されたNintendo Switch 2は、発売から半年近くで既に1000万台以上を販売するなど絶好調です。その一方で、昨今のDRAM価格高騰により、任天堂はSwitch 2販売による利益を確保するのに苦慮する可能性が出てきているようです。
Nintendo Switch 2がDRAM価格高騰でコスト大幅増に
データセンター需要が原因となっているDRAM価格高騰は、既に自作PC向けのDDR5やノートPC本体の値上げ、スペックダウンなどの影響が出始めています。Dellは最大30%に達する値上げを明らかにしています。
それほどまでに深刻化しているDRAM価格高騰ですが、今年6月に発売されたNintendo Switch 2も例外ではありません。絶好調ともいえる販売台数の裏で、DRAM価格高騰により製造コストが大幅に増えていると指摘されており、任天堂の株価が10%も下がる事態になっているようです。
Nintendo Switch 2搭載のLPDDR5Xのコストは41%高騰。NANDも値上がり
Nintendo Switch 2のメモリーには6GBのLPDDR5Xモジュールを2枚、合計12GB搭載しています。ストレージには256GBのNANDチップを1枚搭載する構成です。この構成はSwitch 2が発売された2025年6月時点では、ミドルレンジクラスのスマートフォン並みのスペックでした。
しかし、TrendForceによると、直近のDRAM価格値上がりによりLPDDR5Xモジュールは2025年第4四半期だけで41%の値上げを記録しています。また、256GBのNANDチップも8%の値上げを記録しています。
Nintendo Switch 2は比較的高性能なNVIDIA製チップセットを搭載するほか、本体サイズとディスプレイの拡大、マグネット吸着のJoy-Conなど、コストが嵩む要素が多く、本体の利益率はそれほど高くないといわれています。
そのため、DRAMやNAND価格の高騰によりNintendo Switch 2は損益分岐点を下回り、売れば売るほど赤字に陥る可能性が指摘されています。結果的に任天堂の減益懸念から株価が下がるという事態に陥ったようです。
値上げの可能性も残るが、エコシステム重視で価格据え置きの可能性も高め
DRAMやNAND価格の高騰は、Nintendo Switch 2のハードウェア収益性に大きな影響を与える可能性があります。ノートPCやスマートフォンメーカーが相次いで値上げに踏み切っているように、任天堂も近い将来、価格改定を検討せざるを得ない状況に直面するかもしれません。
ただし、コンソールゲーム機のビジネスモデルは、PCやスマートフォンとは根本的に異なります。ゲーム機は本体販売単体で利益を確保するのではなく、ファーストパーティ製ソフトウェアの販売やサードパーティ製ソフトの販売手数料など、エコシステム全体で収益を上げる構造になっています。そのため、任天堂にとって重要なのは「本体の損益」ではなく「エコシステム全体での収益性」です。
この観点から考えると、値上げによってSwitch 2の普及が鈍化し、結果としてソフトウェア販売による収益が減少するシナリオは、任天堂にとって望ましくありません。多少の本体販売の赤字であれば、エコシステム全体の利益を最大化するために価格を据え置く判断も十分にあり得ます。
しかし、DRAM価格があまりにも高騰し、本体販売の赤字がソフトウェア収益を上回るような事態になれば、値上げは避けられなくなります。現時点では、任天堂がどの程度のコスト増を許容できるかが不透明であり、今後のメモリ市場の動向次第では価格改定の可能性も残されているといえます。
Nintendo Switch 2の販売状況は好調で、任天堂は年度内に2500万台を製造するようにサプライヤーなどに要請していたことが明らかにされています。そのため、相当量の部品は調達または契約済みと考えられ、LPDDR5XやNANDのコスト高騰の影響をある程度は回避できている可能性が高そうです。少なくとも2025年度内にあたる2026年3月までは値上げが実施される可能性はあまりないかもしれません。
ただ、問題は2026年度以降に製造される製品です。ここからはLPDDR5Xのコスト高騰などが反映されてくるため、今後の供給価格次第では任天堂も一時的な値上げに踏み切らざるを得ない可能性も残されています。
いずれにせよ、ノートPCなどと同じくNintendo Switch 2も近いうちに購入しようと考えている人は、年内に、遅くとも2026年3月頃までには購入を進めた方が安心といえそうです。特にゲーム機でありがちな「安くなったら買う」はインフレの時代には通用しないので、買うなら早めが良いです。



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