Galen Hunt氏はLinkedinnに補足を追加しています。Hunt氏によると、彼のプロジェクトはあくまでプログラミング言語間での移行を可能にする先行研究を目的としているとのことで、将来的にWindows 11などにRustが全適用されるわけではないと補足説明をしています。
MicrosoftのWindows 11をはじめとする多くのソフトウェアは、1985年に登場した初代WindowsからCおよびC++言語で開発されています。カーネル部分は主にC言語、GUIコンポーネントはC++で記述されていますが、MicrosoftはこのCおよびC++言語で書かれたプログラムについて、AIを使って2030年までにすべてをRustへ書き換えることを目指しているようです。
MicrosoftがWindows 11含むすべてのプログラムからCとC++言語を廃止を計画中
Windows 11などMicrosoftが作っているソフトウェアのほとんどはCおよびC++言語で作られています。このCおよびC++言語はハードウェアへの直接アクセスや高いパフォーマンスを実現できる一方、メモリ管理を開発者に委ねる設計のため、バッファオーバーフローや解放済みメモリへのアクセスといった「メモリ安全性」の問題が発生しやすいという課題もあります。実際に、Microsoftもこの弱点について認識しており、自社製品の深刻なセキュリティ脆弱性の約70%がメモリ安全性に起因すると報告しています。
そのため、Microsoftはメモリ安全性を言語レベルで保証するRustの導入を進めており、すでにWindows 11ではカーネルの一部分にRustが用いられています。そして、Microsoftはこの動きをさらに加速させる見込みで、2030年までにC/C++言語を全廃し、すべてRustへ「AI」で置き換えることを計画していることが明らかになりました。
求人情報でC/C++全廃計画が判明。AIを活用する予定・・・
この計画は、Microsoftで30年以上の経験を持つDistinguished EngineerのGalen Hunt氏がLinkedInに投稿した求人情報から明らかになりました。求人には「2030年までにMicrosoftから全てのC/C++コードを排除することが目標」と明記されており、AIとアルゴリズムを組み合わせて同社最大規模のコードベースを書き換える戦略が示されています。
Hunt氏の投稿ではAIエージェントを使用して大規模なコード修正を行うとされており、「1人のエンジニア、1ヶ月、100万行のコード」を目標に掲げています。C/C++言語からRustへのコード置き換えには、AIが最大限活用されることが示唆されています。
なお、Microsoftでは自社のソフトウェア開発においてAIを多用していることはSatya Nadella CEOも過去に発言しており、「社内コードの最大30%がAIによって書かれている」と述べています。そのため、今回AIを活用してRustへ置き換えるという取り組みは、同社の方針とも合致しているといえそうです。
セキュリティーは向上するが不具合や品質面での懸念も
Windows含む多くのMicrosoft製ソフトウェアがC/C++で構築されていることを考えると、この計画は非常に野心的といえます。ただ、Microsoftは以前からRustへの取り組みを進めており、Rust開発者向けのWindows APIを整備したほか、GitHubでは「windows-rs」というRustプロジェクションを公開しています。また「windows-drivers-rs」によるRustドライバー開発のサポートも進めており、アプリケーション以外の領域でもRust採用を拡大しています。こうした背景から、AIでの置き換えに向けた学習データや社内的なノウハウもある程度は蓄積できていると考えられます。
ただし、AI活用によってコードを書き換えられても、意図を正確に再現できるかは別の問題です。Rustが局所的に投入されたWindows 11 24H2では多数の不具合が発生したほか、最近のアップデートでもタスクマネージャーが終了できなかったり、ひどい例ではBitLocker回復画面が表示されるなどの問題が発生しています。
そのため、C/C++言語の全廃とRustへの置き換えに関しては、仮に実行されるとなると大規模な不具合などにつながらないかといった懸念も多くあります。Microsoft側も慎重に移行していくことが求められるといえそうです。
ここ最近のWindows 11はやり玉に挙げられる不具合が多く発生しており、ユーザーからの信頼度もあまり高くない状況です。そんな中でのC/C++全廃とRustへの置き換えは、さらに不安に思わせるような取り組みといえます。2030年までという目標はかなり早急であり、さらにAIを活用するなど不安だらけの対応といえそうです。
ただ、MicrosoftのNadella CEOは「AIの取り組みに乗るか、さもなくば去れ」とAI偏重姿勢を鮮明に示しています。このRust置き換えの取り組みと同時に、Windows 11で失敗したCopilot+の後継機能も開発される可能性が高いため、信頼性とサービス品質の両面でバランスが取れるのかどうか、Windows 11ユーザーは注視する必要がありそうです。



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