スマートフォン向けチップセットではQualcommとMediaTekが多くのシェアを握っています。最近ではMediaTekのフラッグシップチップであるDimensity 9000シリーズが比較的高い性能を発揮していますが、同社がGoogleとのTPU開発などAI向けASICや車載向けチップへ人員のシフトを進めていることが明らかになりました。
MediaTekがスマートフォン向けチップセット部門から積極的に人員移動を実施中?
MediaTekのスマートフォン向けチップであるDimensity 9000シリーズは、最近では同世代のQualcommのフラッグシップであるSnapdragon 8シリーズに対して同等レベルの性能を発揮するなど高性能化が著しく、採用モデルも増えてきています。
しかし、MediaTekはスマートフォン向けチップよりも競争が少なく高収益が見込めるAI ASICや車載向けチップ市場へ、人員を含むリソースの再配分を実施していることが明らかになりました。
Google TPUやデンソーとの車載向けチップ開発を優先?
MediaTekはここ最近、スマートフォン向けチップセットの開発をしている傍ら、GoogleのAI向けチップであるTPU第7世代「Ironwood」の開発においてI/Oモジュールの設計を担当しています。GoogleのTPU開発はこれまでBroadcomがほぼ独占的に担ってきたため、MediaTekの参入は同社にとってAI ASIC市場への本格参入を意味します。
次世代TPUは2026年第3四半期に量産開始予定で、Googleは2027年に500万台、2028年に700万台という大規模な生産を計画しています。MediaTekはこの大量生産需要に対応するため、専門チームの立ち上げが必要と判断し、モバイルSoC部門からの人員移動に踏み切ったとのことです。
加えて、2025年12月末には自動車の部品サプライヤーであるデンソーが、ADAS用ECUやインフォテイメント用チップセットをMediaTekと共同開発することを発表しており、こちらにもスマートフォン部門の人員が再配置されているようです。
MediaTekの主力事業として事業拡大を目指す一方でDimentisyシリーズの優先度は低下?
MediaTekはAI ASICにおいて独自の高速SerDes(シリアライザー/デシリアライザー)技術を持っています。特にレチクルサイズの限界により多くのAI向けチップがチップレット化する中で、大量のデータを素早くやり取りする必要があるASICなどとの相性が良いとされています。
そのため、MediaTekはこのAI ASIC事業を2026年には約1500億円、2027年には数千億円規模にまで拡大することを狙っています。Googleに加えてMetaとの協業拡大も模索しており、同社はAI事業を成長の原動力として事業構造を根本から転換する方針のようです。
ただし、AIに軸足を移すには今回のように人員リソースを主力だったスマートフォン向けチップセット部門から配置転換する必要があり、両立は難しいと見られています。今後、Dimensity 9000シリーズなど主力製品の競争力について、競合のQualcommとの競争面で悪影響が避けられないとの見方もあります。Dimensityシリーズへの影響がどの程度になるのか、今後の動向に注目が集まります。
MediaTekはGoogleとの協業後、AI関連企業として名前が挙がり始めていました。収益性などの観点でコンシューマー向け製品よりも高いAI分野にリソースを注ぎ込むのは、企業の選択肢としては正しいと言えそうです。
ただ、MediaTekがスマートフォン向けチップセットで競争力を落とすと、Qualcommがハイエンドからミドルレンジまで市場を寡占することにも繋がります。配置転換によりラインアップや性能にどれだけ影響が出てしまうのか、今後の動向に注目が集まります。



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