Intelの第13世代および第14世代Core「Raptor Lake」CPUが、発売から3年が経過した現在でも供給不足により価格が高騰しています。2025年第3四半期の決算説明会で、CFOのDavid Zinsner氏は、Intel 7プロセスの製造能力不足が主な原因であり、この状況が2026年まで継続すると明言しました。さらに同社はRaptor Lakeについて再び価格調整を実施する方針を示しており、Raptor Lake CPUは今後数ヶ月でさらに値上がりする可能性が高まっています。
Raptor Lakeシリーズが再度値上げする見通し。Intel 7の供給が不足中
第13世代Core「Raptor Lake」は2022年10月に、第14世代Core「Raptor Lake Refresh」は2023年10月に発売されましたが、2025年後半においても供給が需要に追いついていません。
この供給不足により、Raptor Lake CPUの価格は徐々に上昇しており、特にCore i7-14700KやCore i9-14900Kといったハイエンドモデルで顕著な値上がりが確認されています。
通常、CPUは発売から時間が経過するにつれて価格が下落する傾向にありますが、Raptor Lakeは逆に価格が上昇するという異例の事態となっています。この背景には、Intel 7プロセスの製造能力が限られており、需要の高まりに対応できない状況があります。
IntelのCFOであるDavid Zinsner氏は、アナリストおよび投資家向けの電話会議で次のように説明しています。
特にIntel 10とIntel 7の製造能力の制約により、第3四半期にはデータセンターとクライアント製品の両方で需要を完全に満たすことができませんでした
Intel CFO David Zinsner
IntelがRaptor Lakeのさらなる価格調整を明言
Intel 7など旧世代プロセスの製造能力が制約を受けていることを背景に、Intelは同プロセスを使用する製品について価格調整を実施する方針であることを正式に明らかにしました。
現在の厳しい製造能力の制約は2026年まで続くと予想しています。我々は顧客と緊密に連携し、価格調整と製品構成の最適化を含め、利用可能な生産能力を最大限に活用しています
Intel CFO David Zinsner
この価格調整は事実上の値上げを意味すると考えられており、Intelは限られた供給を高価格帯の製品に振り向けることで、収益を最大化する戦略を採用しています。具体的には、より高価格なCore i9やCore i7の上位SKUの生産比率を高め、比較的安価なCore i5やCore i3の生産を抑制することが予想されます。
この方針により、Raptor Lake CPUは今後数ヶ月でさらに値上がりする可能性が高く、特に年末商戦期から2026年第1四半期にかけて価格高騰がピークに達する見込みです。

なお、Raptor Lakeについては既に2025年10月時点で値上げが行われていますが、Intelの方針によりさらなる値上がりが予想されます。
Intel 7の製造能力が複数製品で奪い合いに
Raptor Lake CPUの価格上昇の根本原因は、Intel 7プロセス技術の製造能力が複数の製品で奪い合いになっていることにあります。Intel 7は2021年から2022年にかけて導入された技術で、現在の基準では旧世代に属しますが、依然として高い性能を発揮できるため、Intelは以下の製品の製造に使用しています。
- 第13世代 Raptor Lake CPU
- 第14世代 Raptor Lake Refresh CPU
- Granite RapidsのI/Oダイ
- Emerald RapidsのCPUダイ
これら複数の製品が同じIntel 7プロセスで製造されているため、製造ラインが逼迫しています。特に深刻なのが、高収益のデータセンター向けXeon 6 CPUがIntel 7で製造されるI/Oダイを必要としている点です。
Intelは旧世代プロセスの製造能力を拡張する計画がないため、Intel 7ベースの製品に対する需要が今後数四半期にわたって強いままであると予測しています。そのため、Raptor Lake CPUは2026年まで供給不足が続く見込みです。
データセンター向けCPU優先でRaptor Lakeは後回しに
Raptor Lakeの供給がさらに制約される最大の要因は、Intelがデータセンター向けCPUを優先する戦略を採用していることです。
第4四半期には、クライアント向けが若干減少し、データセンターおよびAI部門が大幅に増加すると予想しています。これは、エントリーレベルのクライアント製品よりもサーバー出荷にウェハー製造能力を優先しているためです
Intel CFO David Zinsner
データセンター向けCPUは1台あたり数千ドルで販売されるのに対し、Raptor Lakeなどコンシューマー向け製品は高くても500~600ドル程度であるため、製造能力を最も収益性の高い製品に振り分けることは企業経営の観点からは当然の判断と言えます。
しかし、この判断により、Raptor Lake CPUの供給はさらに制約され、価格上昇圧力が強まることになります。特にCore i9やCore i7といったハイエンドモデルは、現在最新鋭のArrow Lake世代CPUに対して見劣りしない性能を発揮することから、ゲーミングPCやクリエイター向けワークステーションで高い需要があるため、供給不足が顕著となっています。
2026年第1四半期が供給不足が最も深刻になる見通し
Zinsner氏は、2026年第1四半期が供給不足のピークになる可能性があることも示唆しています。
実際には第1四半期が供給不足のピークになる可能性があります。というのも、第3四半期と第4四半期は多少の在庫を活用し、工場の生産能力を可能な限り引き上げて対応してきたためです
Intel CFO David Zinsner
Intelは2025年後半、在庫を取り崩すことで需要に対応してきましたが、その在庫が底をつく2026年第1四半期には製造能力の制約がより顕著に現れます。
この時期がRaptor Lake CPUの価格上昇のピークとなり、その後はPanther Lakeの量産拡大や製造効率の改善により多少の緩和が期待されます。
ただし、18Aプロセスを採用するPanther Lakeの立ち上がり状況次第では、価格高騰がさらに長期化する可能性があります。
また、デスクトップ向けCPUは2026年後半のNova Lakeまで新製品の登場予定はなく、あまり人気がないArrow Lakeしかラインアップされないため、特に2026年初め頃には在庫切れや価格の大幅な値上がりが予想されます。そのため、Raptor Lake系CPUでPCを組もうと考えている場合は早めに購入することをお勧めします。2026年初め頃にPCを組む場合には、AMD以外にリーズナブルなCPUは存在しない状態となりそうです。



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