メモリ不足や価格高騰を背景にPC本体の価格は大きく値上げされている状況です。そうした中、市場調査会社の最新レポートによると、2026年のPC出荷台数は前年比10.4%の減少が見込まれるほか、2028年までにエントリー向けPCが消滅する見通しであることが明らかになっています。
メモリ価格高騰でエントリー向けPCは消滅。買い替え頻度も伸びる傾向に
メモリはデータセンターの建設ラッシュを背景に需要が供給を上回っており、その結果メモリ価格は2025年初旬に対して市場価格では3〜5倍程度と高騰しています。そのため、PC業界では値上げやメモリ容量の削減のほか、新製品の発売延期など影響が出始めています。
市場調査会社のGartnerによると、これらメモリ価格の値上がりは2026年第二四半期以降さらに悪化する見通しです。この影響により、エントリー向けPCの消滅や買い替えサイクルの延長など、消費者へも多大な影響を及ぼすことを明らかにしています。
8万円以下のエントリー向けPCは消滅へ
GartnerのシニアディレクターアナリストであるRanjit Atwal氏は、エントリー向けPCセグメントの見通しについて以下のように述べています。
この急激なコスト上昇により、メーカーがコストを吸収する余地がなくなり、利益率の低いエントリー向けノートPCは事業として成り立たなくなる。最終的に、500ドル以下のエントリー向けPCセグメントは2028年までに消滅するだろう。
Gartner -Ranjit Atwal
Gartnerによると、エントリー向けPCなど低価格モデルは利益率がかなり低いとのことで、このような部品価格上昇分は利益を削って販売するのが一般的だったとのことです。エントリー向けPCは薄利多売で利益を上げることや、自社製品に触れてもらうことで将来的に上位商品の購入につなげる狙いがあるためです。
しかし、メモリ価格高騰により、メモリコストがPCの原価を占める割合は2025年までは16%程度だったものの、2026年のピーク時には23%まで上昇するとのことです。多くのPCメーカーはメモリコストの吸収が困難となっており、結果として500ドル(約8万円)以下のノートPCは市場から消える可能性が高いとされています。さらに、15万円以下のメインストリーム向けモデルも値上げなどの影響を受けることを明らかにしています。
PCの買い替えサイクルも最大20%延長へ。セキュリティーリスクの懸念も
Gartnerは、メモリ価格の高騰を受けて消費者が新たなPC購入を先送りする傾向が強まると分析しています。これにより、PCの平均使用期間は2026年末までに法人ユーザーで15%、個人ユーザーで20%延長される見通しです。
この買い替えサイクルの長期化は、古いデバイスの継続使用に伴うセキュリティ脆弱性の増大に加え、法人などでは旧式デバイスの管理負担の増加といった新たな問題を生む可能性を指摘しています。
なお、スマートフォン市場でも同様の傾向がみられることを指摘しています。エントリー向けユーザーはプレミアム帯のユーザーと比較して5倍の速さで新品購入を見送るようになるとGartnerは予測しており、今後は中古品やリファービッシュ品への移行、あるいは現在のデバイスの長期利用が進むとのことです。
メーカーにとっての勝負は2026年前半、Q2以降はさらに厳しい状況に
Atwal氏によると、メモリ価格高騰は2026年第二四半期以降にさらに悪化する見通しで、本格的にPCの利益率に影響を与え始めるとのことです。そのため、PCメーカーや販売代理店にとって2026年前半は価格戦略と利益率を最適化するための「重要な時間的猶予」になるとのことです。
なお、今後各社PCメーカーは企業方針により戦略に違いが出てくるものの、多くのメーカーは値上げに踏み切ると考えられています。価格に敏感な消費者を追って利益率を犠牲にするより、出荷台数減少を受け入れてでも収益率を維持する戦略の方が選択肢を広く持てるためです。ただ、その背反として2026年の出荷台数は前年比10.4%減少など、多くの消費者がPCの買い控えをすると見られています。
元々、エントリー向けPCはメモリ価格が高騰する以前から、液晶やバッテリー、そして高性能化が求められるチップセットなどでコストが上がっている状態でした。メモリ価格高騰が致命傷となり、今後Chromebookや安価なWindows 11搭載ノートPCなどは大きく値上げされる可能性が高いと言えそうです。
ただ、今後の値上げを背景に買い替えサイクルの長期化などが起きれば、メーカー各社は売上高が落ちることは必至です。各社とも高級路線へのシフトが求められますが、高級化が受け入れられるメーカーとそうでないメーカーの二極化が進むため、難しい戦略を迫られると考えられます。



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