SK Hynixの親会社であるSKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長は、世界的なメモリ供給不足が2030年まで継続するとの見通しを示しました。あわせて、SK HynixのCEOがDRAM価格の安定化に向けた新たな計画を近日中に発表する予定であることも明らかにしています。
メモリ不足解消は2030年頃とSKグループ会長がGTC 2026で発言
DDR5などメモリを巡ってはAI需要によるデータセンターの建設ラッシュなどにより世界的にメモリが不足し、結果としてメモリ価格が大幅に高騰している状況です。また、このメモリ不足の改善については2028年頃まで解消が難しいのではないかというのが調査会社などの見方でした。
しかし、メモリ大手のSK Hynix親会社であるSKグループの会長は最長で2030年までメモリ不足が続く見通しを明らかにし、同時に価格安定化に向けた新しい計画を発表することを明らかにしました。
2030年まで業界全体で20%以上のメモリ供給不足が続く見通し
聯合ニュースによると、崔会長は3月16日(現地時間)に米カリフォルニア州サンノゼで開催されたNVIDIAの年次開発者会議「GTC 2026」の会場で記者団の質問に応じ、メモリ供給不足について「2030年まで業界全体で20%以上の供給不足が続く」との見通しを述べました。
その根拠として崔会長は「供給不足の問題はウェーハ不足に起因しており、より多くのウェーハを確保するには最低4〜5年かかる」と説明しています。ウェーハとはDRAMチップの製造に使われるシリコン基板のことで、製造設備の新設から実際の量産までに長い期間を要するため、短期間での供給増が難しいことを示しています。
なお、数日前には調査会社のCounterpoint Researchがメモリ不足のピークは2027年後半であるとしていましたが、崔会長の見通しはこれをさらに2〜3年上回るものです。需要は高止まりする一方で、供給拡大は簡単には進まないことを示唆しています。
DRAM価格安定化に向けた新計画を近日発表予定。価格は高止まりで安定へ?
崔会長はメモリ価格の高騰についても言及し、「価格安定化のために最善を尽くす」と述べたうえで、SK HynixのCEOである郭魯正氏がDRAM価格安定化のための新しい計画を近日中に発表することを明らかにしています。
なお、現時点でこの「価格安定化計画」の具体的な内容については明らかにされていません。しかし、崔会長が「短期間ではメモリ供給を劇的に増やすことは難しい」としていることから、供給量の増加ではなく、契約形態の見直しなど需要側と供給側の関係を調整する施策が中心になると見られます。そのため、純粋にメモリ価格が下がるというよりは急激な価格変動を抑え、パニック買いなどを防ぐ仕組みが中心になると見られています。
日本含む海外工場の計画はなし。韓国集中の方針を発表
SK Hynixの工場を巡っては日本に工場を作る可能性があるという話が2月末ごろに出ていましたが、生産拠点の拡大を巡っては崔会長は「韓国にはすでに基盤が整っており、はるかに迅速に対応できる」として韓国への投資集中を続ける方針を示しています。
特に、海外工場では「電力、用水、建設環境、エンジニア人材がすべて揃っている必要がある」と述べ、米国や日本などの海外拠点の新設は韓国での建設と同等の時間がかかるため合理的ではないとの認識を示しています。日本で工場が建設される可能性はあまり高くないといえそうです。
メモリ不足については2027年から2028年頃をピークにそのあとは解消していくことを調査会社などは予測していました。しかし、SK Hynixがいうように2030年頃までメモリ不足が続くとなるとメモリ高騰の影響を受けるPC、スマートフォン、グラフィックスカード、ゲーム機などの価格は今後数年にわたって高止まりが続くことになり、今の価格帯が新しいスタンダードとなるといえそうです。
なお、SK Hynixが今後発表する価格安定化計画についてはまだ詳細は不明です。ただ、崔会長は「HBMに集中しすぎると汎用DRAMが不足し、スマートフォンやPCなど既存産業に影響が出る」とも述べており、コンシューマー向け製品への影響も考慮する姿勢を示唆しています。そのため、供給不足を起因とする値上げを解消することは難しくても、供給価格や供給の不安定さを防ぐ仕組みや契約形態などを明らかにすると考えられ、このような施策がコンシューマー向け製品にどのような影響を与えることになるのか注目が集まります。



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