Appleはコスト低減やQualcommへの依存度を減らすためにモデムの自社開発を進めており、その第一弾がiPhone 16eに搭載されたApple C1モデムとなっています。ただし、性能はiPhone 16シリーズに搭載されているQualcomm製モデムに比べて劣ることから、新たに発売されたiPhone Airでは改良版として、より性能を向上させたC1Xモデムを搭載しています。
そんなAppleの新しいC1Xモデムですが、専門家の調査によると性能は依然としてQualcommの最新モデムに劣る一方で、消費電力はAppleの発表通り大きく引き下げられていることが明らかになりました。
純粋な性能ではQualcommには及ばず
技術調査会社Creative StrategiesのBen Bajarin CEOがCNBCに語ったコメントによると、C1Xは生のスループットや総合的な性能面でQualcommのモデムにまだ追いついていない状況だとしています。実際、iPhone 17シリーズの分解調査では、iPhone Air以外の全モデルにQualcommのSnapdragon X80が搭載されていることが判明しており、高速通信が必要な上位モデルでは依然としてQualcomm製が選ばれていることがうかがえます。
C1XはSnapdragon X75を上回る速度を実現しているものの、mmWave 5G接続には対応しておらず、sub-6GHz帯域のみの対応となっています。この制限により、理論的な最高速度ではQualcommの最新チップに劣る状況です。しかし、実際の使用環境では通信インフラの制約により理論値に近い速度が出ることは稀であるため、日常使用において大きな差は感じられない可能性が高いとされています。
バッテリー持続時間では優位性
一方でC1Xが真価を発揮するのはバッテリー効率の面です。iPhone AirではN1ワイヤレスネットワーキングチップとC1Xを組み合わせることで、27時間の動画再生時間を実現しています。Bajarin氏は以下のように評価しています。
C1Xは単純なスループットやパフォーマンスの面ではQualcommのモデムほど優れていないかもしれませんが、Appleは自社でコントロールでき、より低消費電力で動作させることができます。結果としてバッテリー持続時間が向上します。
Ben Bajarin -Creative Strategies
Appleの強みは、ハードウェアとソフトウェアの緊密な統合による最適化にあります。特にC1XはiOSと緻密な連携が図られることで、高い省電力性能を実現していると見られており、性能よりもバッテリー持続時間を重視するユーザーにとって、この優位性は通信速度の若干の差を補って余りある価値を持つと考えられます。
iPhone ProシリーズはQualcommを継続? iPhone無印やAirは今後は自社モデムに切り替え?
AppleはQualcomm製モデムを長年採用し続けていますが、高いコストやサプライチェーンの独立性確保、そして自社ソフトウェアとの統合・最適化という面で自社製モデムの開発を推進しています。その一つが今回iPhone Airに搭載されたC1Xモデムですが、Qualcommからの脱却を図るには、まだ時間が必要とみられています。
実際に、mmWave非対応などApple自社製モデムではQualcomm製モデムに劣る点が多いほか、通信速度の高速化や様々な電波規格・法規対応の面からiPhone 17 ProなどProシリーズに求められる性能を達成することは容易ではないと見られています。そのため、今後数年間はiPhone ProシリーズなどのハイエンドモデルはQualcomm製を継続しつつ、自社製モデムをiPhone無印版やAirなどに採用するなど、徐々に自社製モデムの展開を拡大すると見られています。
また、Appleの最終的な目標は5Gモデム、Wi-Fi、Bluetoothチップを単一パッケージに統合することで、さらなる省スペース化と電力効率の向上を実現することとされています。iPhone Airに搭載されたC1XやN1などは、ワイヤレス関係の統合におけるチップ開発戦略において重要なマイルストーンと位置づけられます。
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