AMDのRyzenやEPYCなどの主力CPUはTSMCの先端プロセスで製造されています。ただ、主力製品を1社に依存することへのリスクや、最近の価格高騰への懸念から、AMDはサムスンファウンドリーでのCPU製造を本格的に検討していることが明らかになりました。
AMDがサムスン2nmでのCPU製造を本格検討へ
AMDのRyzenやEPYCなど、ほぼすべてのCPU製品はTSMCで製造されています。ただ、TSMCをめぐっては台湾に位置することから地政学リスクのほか、先端プロセスでは製造キャパシティの問題、そして強気な価格設定などが懸念材料として挙げられています。
そのため、AMDはサムスンでの製造をたびたび検討しており、過去にはZen 6世代のEPYCに搭載されるI/Oダイにサムスン4nmを採用することが検討されていました。

ただ、サムスンファウンドリーもコスト優位性はあるものの、歩留まりがTSMCに比べて低いなどの問題を抱えており、AMDからは現在もサムスンファウンドリーを本格採用した製品は出ていません。
しかし、サムスンが開発中の第2世代2nmプロセス「SF2」は、すでにExynos 2600の量産準備が整うなど、過去のプロセスに比べて歩留まりが大きく向上しているとされています。これを受けて、AMDも採用に向けた本格的な検討を開始しているようです。
サムスンSF2を用いたAMDチップが試作中。2026年1月に最終判断
韓国のソウル経済新聞によると、サムスンはマルチプロジェクトウェハー(MPW)を用いてAMD向けのチップを試作することを計画中とのことです。MPWは「シャトルサービス」とも呼ばれ、1枚のウェハーに複数の顧客が設計したチップを配置して同時に製造する手法です。マスクやウェハーのコストを複数の顧客で分担できるため、本格的な量産前の試作コストを大幅に抑えられるメリットがあります。
AMDはこの試作を通じて、サムスンのSF2で求める性能水準を実際に達成できるかを検証し、2026年1月頃に契約の最終判断を行う方針とされています。業界関係者によると手応えに自信があるようで、SF2がAMD製CPUに採用される可能性は高いとのことです。
採用されるならZen 7のエントリーモデルなど?
サムスンのSF2は2nm世代にあたり、同プロセスを使用する次世代CPUは2028年以降に発売が計画されているZen 7世代になると見られています。

Zen 7では、サーバーやデスクトップ、ノートPC向けのCCDにはTSMC A14プロセスを採用することで性能の大幅向上を実現するとされています。ただ、最先端プロセスはコストが非常に高く、ノートPC向けAPUのようにCPU、内蔵GPU、I/Oダイをすべて含むモノリシックダイで製造することはコスト的に困難になると考えられます。
そのため、コスト優位性のあるサムスンSF2は、Zen 7世代のAPU製造に採用される可能性が高いと考えられます。
AMDがサムスンを採用するという話は過去に何度も出ていますが、歩留まりなどの問題からいずれも実際の採用には至りませんでした。そのため、今回のSF2についてもどうなるかは不明です。
ただ、TSMCのコストが大きく跳ね上がる中では、多少歩留まりが劣っていても要求される性能が出せれば採用される可能性は高まります。現状、半導体の多くはTSMC製でこれにより価格競争力が発揮できず、コスト高騰を招いている状態です。また、地政学リスクやサプライチェーン上でもTSMCへ完全依存することは好ましくないため、今度こそサムスン製がAMD製品に採用されるのか、そしてこれによりTSMC一強体制や強気な価格設定が緩和されるのか、注目が集まります。



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