中国のPCメーカーCHUWIが、自社のノートPCおよびミニPCにおいてZen 2世代のRyzen 5 5500UをZen 3世代のRyzen 5 7530Uと偽装して販売していたことが発覚しています。この件についてAMDは、法的措置も示唆する厳しい内容の声明を発表しました。
CHUWIのCPU偽装問題にAMDが声明発表。法的措置も示唆
中国のCHUWIが販売するノートPCやミニPCを巡っては、Zen 3世代のRyzen 5 7530Uを搭載すると謳った製品に、実際にはZen 2世代のRyzen 5 5500Uが搭載されていたことが発覚しています。この件についてAMDは同社の関与を完全否定すると共に、CPUブランドを棄損する行為として法的措置も示唆する声明を発表しました。
AMDが声明で関与を全面否定。法的措置の可能性も
AMDは3月17日付で以下の公式声明を発表しています。
このたび、CHUWIがAMD Ryzen 5 5500Uを無断でRyzen 5 7430Uと虚偽表示していた件について認識いたしました。AMDは上記の行為に対して、いかなる形の授権、確認、または黙認も与えておらず、関連製品の型番表記や宣伝に関する意思決定にも一切関与しておりません。本件について、AMDはまったく認知しておりませんでした。
AMDは製品型番の命名、使用、および表示について明確かつ厳格な管理規範を設けております。当社の許可なく型番を使用する行為、または事実に反する表示を行う行為は、正常な市場秩序を著しく乱すものであり、消費者に誤認を与えるおそれがあります。
AMDは一貫して製品情報の正確性と透明性を重視し、公正で秩序ある市場環境および消費者の正当な権益の保護に尽力してまいりました。当社は本件を厳正に注視しており、関係者に対して法的責任を追及する権利を留保いたします。
AMDはこの件について明確に関与を否定しており、BIOSの改ざんなどはCHUWIまたはそのODMが意図的に実行したと見られています。なお、今回の件はAMDのブランドを勝手に使って消費者を騙すなどAMDのブランドイメージを棄損する行為でもあるため、法的措置についても言及するなど異例の対応です。事態の深刻さがうかがえます。
CPUの性能差は20%差
CHUWIで問題となっている製品はノートPCのCoreBook XとCoreBook Plusで、さらにミニPCのUBOX 7430Uでも最近になり偽装が発覚しています。なお、商品ページで謳われているRyzen 5 7530Uに関しては冒頭で紹介している通りZen 3アーキテクチャで発売時期は2023年になっています。一方で、実際に搭載されていたRyzen 5 5500UはZen 2アーキテクチャで発売も2021年と2年ほど古いCPUになっています。
| 項目 | Ryzen 5 5500U | Ryzen 5 7530U |
|---|---|---|
| アーキテクチャ | Zen 2(Lucienne) | Zen 3(Barcelo-R) |
| コア/スレッド | 6C / 12T | 6C / 12T |
| ベースクロック | 2.1 GHz | 2.0 GHz |
| 最大ブーストクロック | 4.0 GHz | 4.5 GHz |
| L2キャッシュ | 3 MB | 3 MB |
| L3キャッシュ | 8 MB(2×4MB) | 16 MB |
| TDP | 15W | 15W |
| 内蔵GPU | Radeon RX Vega 7(7CU) | Radeon RX Vega 7(7CU) |
| 発売時期 | 2021年1月 | 2023年1月 |
| Passmarkスコア | 12,694 | 15,193 |
また、仕様も大きく異なっています。CPUコア数は6コアで同じものの、性能に直結するL3キャッシュ容量は16MBに対して半分の8MBしか搭載されず、アーキテクチャも1世代古くなっています。そのため、PassmarkのマルチコアベンチマークではRyzen 5 5500UはRyzen 5 7530Uに対して16.5%劣る結果となっています。様々なワークロードを加味すると最大20%もの性能差が生じるなど、両者は明らかに異なるCPUです。
性能のバラツキが大きいノートPCだからすぐにバレなかった?
CPU偽装が発覚しているCoreBook Xの発売時期は2025年7月頃で、同社はレビューユニットを提供しており多くのメディアにレビューが掲載されています。ただ、このCPU偽装が明るみに出たのは2026年3月に入ってからで、半年以上も偽装が発覚しなかったことになります。
この主な原因として、ノートPCでは冷却性能の違いによりCPU性能が大きく変わるという特性があります。恐らくCHUWIまたはODMなどの製造元がこの性能差を逆手に取り、CPU偽装を行ったものと見られており、計画性が高く悪質といえます。
なお、CHUWIはこの問題について声明を出しておらず、最初にこの偽装に気付いたNotebookCheckに対して偽装を問題視する記事の取り下げや、法的措置を示唆するなど問題に真摯に取り組む姿勢は見せていない状況です。
今回の問題は単なるスペックの誤表記ではなく、ファームウェアレベルでCPU名を書き換えるという意図的な偽装である点が極めて悪質といえます。さらにAMDのブランドを使ってこのような偽装を行ったということで、AMD側も問題視している状況です。
なお、CHUWIの製品はAmazonなどでも販売されていますが、発売されてまだ1年が経過していないため、消費者契約法に基づく誤認取消しとして1年以内であれば返品対応が可能です。そのため、もし同社で偽装されているノートPCを持っている場合はAmazonや消費者センターなどに問い合わせることで返品対応などをしてもらえる可能性があります。



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