Intelが2024年に発売したArrow Lakeはゲーミング性能などが競合AMDのRyzen 9000シリーズに劣ることから、販売状況は好調とはいい難い状況でした。その挽回策として、Intelはリフレッシュ版にあたるArrow Lake Refreshを正式発表し、性能向上に加え大幅な値下げなど、競争力が大きく高められています。
Arrow Lake Refreshが正式発表。性能向上と大幅な値下げで競争力向上
IntelのArrow Lake(Core Ultra 200S)は2024年10月に発売されたデスクトップ向けCPUですが、発売当初はBIOSやWindows側の不具合によりゲーミング性能が振るわず、厳しい評価を受けていました。その後のアップデートで性能は改善されたものの、ゲーミング市場ではAMD Ryzen 9800X3Dに対して劣勢が続いています。
そんなArrow Lakeですが、同CPUはリフレッシュ版の登場が2025年頃から噂されていました。今回、IntelはArrow Lake RefreshをCore Ultra 200S Plusとして正式発表し、E-Coreの増量に加え、課題だったD2D(Die-to-Die)動作クロックの引き上げやソフトウェアによる最適化、そしてArrow Lakeに対して大幅な値下げが行われており、その競争力は前世代から大きく変化しています。
D2D周波数が900MHz向上しゲーム性能は最大15%改善。新ツール「iBOT」も投入

Core Ultra 200S Plusの主な改善点としてはE-Core(Skymont)の増量が挙げられ、Core Ultra 7 270K Plusでは前世代の265Kから4基増の8P+16Eの24コア、Core Ultra 5 250K Plusも245Kから4基増の6P+12Eの18コア構成となっています。
ブーストクロックはP-Coreはほぼ据え置きですが、E-Coreは全モデルで100MHz引き上げられています。いずれもTDPは前世代と同一のため、消費電力を増やすことなくコア数の増加が実現されています。
こうしたハードウェア面での強化に加え、Core Ultra 200S Plusではソフトウェア面でも新たな取り組みが導入されています。「Intel Binary Optimization Tool(iBOT)」と呼ばれる最適化技術がそれで、Intelの40年に及ぶコンパイラ開発の知見を活用したバイナリ変換レイヤーとなっています。他のx86プロセッサやゲーム機向けに最適化されたゲームであっても、Arrow Lake上でのIPC(命令あたりの処理性能)を改善できるとされています。ARM向けのMicrosoft PrismやApple Rosettaのようなエミュレーション技術とは異なり、x86バイナリのネイティブ実行を最適化するものとのことです。ただし、具体的な動作原理や対応タイトルについてはまだ詳細が明らかにされていません。
なお、このArrow Lake RefreshはCPUアーキテクチャ自体にはP-Core・E-Core共に変更はないものの、特に課題として挙げられていたゲーミング性能のボトルネックとなっていたD2Dの動作クロックが2.1 GHzから3.0 GHzに引き上げられたことで、メモリーレイテンシーの改善によるゲーミング性能向上が期待されます。
ゲーミング性能はCore Ultra 7 270K Plusで15%向上。Ryzen 9 9950X3Dに迫る性能に


Intelの自社テストによると、Core Ultra 7 270K PlusはCore Ultra 7 265Kに対してゲーミング性能が平均15%向上(1080p、38タイトルの平均)、250K Plusは245Kに対して平均13%の向上を示しているとのことです。

なお、Ryzen 7 9850X3D発売時に計測されたCore Ultra 7 265Kのゲーミング性能はTechPowerUPのレビューでは179.0FPSでしたが、仮に15%向上がそのまま反映されると206FPSとなり、Ryzen 7 7800X3D超え、Ryzen 9 9950X3Dに迫る性能となります。また、Core Ultra 5 250K PlusもRyzen 7 7800X3D相当の性能に達することが予想されます。
ご祝儀価格でもCore Ultra 7 270K Plusは約6万円、Core Ultra 5 250K Plusは約4万円で販売?
| Core Ultra 7 270K Plus | Core Ultra 7 265K | Core Ultra 5 250K Plus | Core Ultra 5 245K | |
|---|---|---|---|---|
| コア構成 | 8P+16E(24コア) | 8P+12E(20コア) | 6P+12E(18コア) | 6P+8E(14コア) |
| 最大ブースト | 5.5 GHz | 5.5 GHz | 5.3 GHz | 5.2 GHz |
| L3 / L2 | 36 MB / 40 MB | 30 MB / 36 MB | 30 MB / 36 MB | 24 MB / 26 MB |
| D2D周波数 | 3.0 GHz | 2.1 GHz | 3.0 GHz | 2.1 GHz |
| メモリ対応 | DDR5-7200 | DDR5-6400 | DDR5-7200 | DDR5-6400 |
| MTP | 250W | 250W | 159W | 159W |
| 価格 | $299 | $394 | $199 | $309 |
| 日本円換算 | 61,800円(予想) | 78,800円 | 41,800円(予想) | 59,800円 |
Core Ultra 200S Plusとして発売されるCore Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K Plusはそれぞれ先代のモデルに対して$100程度の値下げが行われています。この価格変更によりコストパフォーマンスは大きく向上しているといえ、Core Ultra 7 270K Plusに近いゲーミング性能を持つRyzen 7 7800X3Dが$381で販売されているため、20%もコストパフォーマンスが優れる計算になります。
日本での販売価格は、過去の販売レートや現在の為替レートを加味した予想で、Core Ultra 7 270K Plusが6.2万円前後、Core Ultra 5 250K Plusが4.2万円前後になると見られています。この価格はいわゆるご祝儀価格での換算であるため、発売数週間から数か月後にはCore Ultra 7 270K Plusは5万円前後、Core Ultra 5 250K Plusは3万円前後とかなり購入しやすい価格に落ち着くと考えられます。Ryzen 7 9800X3Dなどに対しても競争力を大きく高められそうです。
発売日は2026年3月26日。レビュー解禁日も同日

Core Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K Plusの2モデルは共に2026年3月26日(木)に発売が開始されます。また、レビューも同日に解禁が予定されています。
Core Ultra 9 290K Plusはお蔵入りに
Arrow Lake Refreshについては当初、Core Ultra 9 290K Plusも投入予定でした。しかし、同CPUは2月頃にキャンセルされたという噂が出ており、今回の正式発表でも言及がなかったことから、発売間際に投入が中止されたようです。

なお、Core Ultra 9 290K PlusについてはE-Coreのコア数増などは無く、コストパフォーマンスもあまり良くなかったことが投入中止理由とされています。Core Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K Plusの価格が非常に安価であることを考えると、Core Ultra 9 290K Plusはコスト的に安価に提供することが難しく、結果的に発売中止になったといえそうです。
Arrow Lake RefreshについてはD2Dクロック向上などによりゲーミング性能が大きく向上すると噂されていましたが、Intelの示した結果ではその向上幅はかなり大きく、弱点が改善されているといえます。また、価格は予想以上に攻めた設定です。Intelの示したゲーミング性能通りであれば、Ryzen 7 9800X3DやRyzen 7 7800X3Dを大幅に上回るコストパフォーマンスが期待できるため、新たにゲーミングPCを組むユーザーからは支持を集められそうです。
ただ、Arrow Lake Refresh自体は非常に魅力的な製品ですが、メモリやGPU価格の高騰で市場環境が厳しいのは不運といえます。こうした状況下でどれほどの販売数を確保できるか、またArrow Lakeで酷評されたレビュー評価を今回どこまで覆せるか、3月26日のレビュー解禁で第三者の検証結果が出た際にIntel自社テストとの乖離がどの程度あるかが焦点となりそうです。



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