AMDは2026年2月3日(現地時間)、2025年第4四半期および通年の決算を発表しました。メモリ価格高騰によるPC市場の縮小が懸念される中、同社CEOのLisa Su氏は「焦点はエンタープライズとハイエンド」と述べ、メインストリーム市場よりも高収益セグメントへの注力を明確にしています。
2025年度Q4決算は過去最高を記録。コンシューマー向け製品も伸びる
AMDはデータセンター向けにCPUやGPUなどを供給しており、NVIDIAに次ぐハードウェア企業として高い収益が期待されています。2026年2月3日(現地時間)に発表された2025年第4四半期および通年の決算では、市場の想定通りデータセンターが同社最大のセグメントに成長していることが明らかになりました。一方、消費者が気になるコンシューマー向け製品では収益こそ維持したものの、CEOのLisa Su氏がコンシューマー向け製品の今後の戦略について、少々懸念が生じる方針を検討していることも判明しています。
AMD全体では過去最高益。データセンターは過去最大の収益を記録

AMDの2025年第4四半期の売上高は103億ドル(約1兆6,300億円、1ドル=158円換算)で、前年同期比24%増となり過去最高を記録しました。通年の売上高も346億ドル(約5兆4,700億円)と過去最高を更新しています。純利益は第4四半期が15億ドル(前年同期比213%増)、通年では43億ドル(前年比164%増)でした。

事業セグメント別では、データセンター部門が第4四半期に54億ドル(前年同期比69%増)を記録し、AMDの最大事業に成長しています。これはAI向けデータセンター建設ラッシュに伴い、EPYC CPUやInstinct GPUの出荷が増加したことが寄与しています。
ただし、データセンター事業で競合するNVIDIAは直近の決算でデータセンター部門だけで512億ドルを計上しており、前年同期比で約67%増という成長率を示しています。そのため、AMDのデータセンター事業は急成長を続けているものの、NVIDIAとの差は依然として大きい状態です。
コンシューマー向けも収益拡大もメモリ高騰の影響が懸念

2025年Q4はメモリ価格高騰が深刻化し始める時期ですが、コンシューマー向け製品の売上高にはまだ本格的な影響が出ていません。CPUなどクライアント向け製品と、RadeonやPS5向けAPUなどのゲーミングを合わせたセグメント全体では、前年同期比で34.5%の増収を記録しています。特に注目すべきはゲーミング部門で、数字としては小さいものの前年同期比33%増を記録しており、AMDによるとRadeon RX 9000シリーズなどの販売が好調だったとのことです。
I think the PC market is an important market. Based on everything that we see today, we're probably seeing the PC TAM down a bit, just given some of the inflationary pressures of the commodities pricing, including memory.
Even in that environment with the PC market down, we believe we can grow our PC business. Our focus areas are enterprise. That's a place where we're making very nice progress in 2025, and we expect that into 2026, and just continuing to grow sort of at the premium, higher end of the market.
Lisa Su -AMD CEO
ただし、今後についてはメモリ価格の高騰が販売面に悪影響を与えることは避けられない見方を示しています。Lisa Su氏はPC市場の重要性を認めつつも、メモリ価格を含むコモディティ価格のインフレ圧力により、PC市場の総需要は縮小する見込みだと述べています。
今後の見通しは、下半期は上半期に比べて若干弱めの需要になると予測しており、メモリ価格高騰の影響が年後半に顕在化することを予想し、織り込んでいるとしています。
ただし、そのような環境下でもAMDはPC事業を成長させられるとしており、その成長の軸はエンタープライズ(企業向けPC)市場やプレミアム・ハイエンドセグメントに置かれるとのことで、しばらくの間はコンシューマ向け製品はハイエンドモデルを主軸とすることを明らかにしています。
コンシューマ向け製品は全体的に値上がりへ?
メモリ価格の高騰により、DDR5を使用するRyzen 7000シリーズやRyzen 9000シリーズのメインストリーム向けモデルは売れ行きが鈍化していると見られています。その一方で、Zen 3世代のRyzen 5000シリーズは依然として販売が好調であり、AMD幹部もRyzen 5000シリーズの再販を検討する動きを見せています。
こうした状況を踏まえると、AMDとしてはメモリ価格が高騰している間、コンシューマー向けでは一定の出費を厭わないハイエンド志向のユーザーをターゲットとする構えである可能性が高く、今後登場するZen 6世代のCPUでは上位モデルを中心にラインアップが構成される可能性があります。

特に2026年秋以降に登場予定のZen 6では、TSMCの2nmプロセスのうち性能重視のN2Pプロセスが採用されており、同プロセスはTSMC 4nmに比べて1.5倍以上のコストがかかると言われています。加えて、Zen 6のCCDあたりのダイサイズはZen 5から若干大型化するなど、コストアップ要素が多く存在します。スペック面ではコア数が12コア、キャッシュ容量が48MBに増加するなど高性能化も進んでいるため、仮にAMDが述べるようにハイエンドをターゲットとする場合、Ryzen 7のようにCCDを1基搭載する後継モデルでもRyzen 9 9900Xに迫る価格設定となる可能性があり、価格高騰が懸念されます。
AMDの決算発表はデータセンター向け製品に加え、コンシューマー向け製品も堅調に伸びている結果となっています。しかし、この決算はメモリ価格高騰を前にした駆け込み需要なども見られていた2025年10月から12月の実績であるため、2026年Q1の決算がどのように推移するかが注目されます。
AMDのLisa Su氏が述べるように、コンシューマー向けでは総需要の減少が確実視されているため、2025年Q4と同水準の結果を出すにはハイエンドモデル重視にシフトせざるを得ない状況です。その結果、Ryzen 9000シリーズのエントリーモデルやZen 6世代で安価なモデルが登場する可能性はかなり低いと考えられます。また、AMDがコンシューマー製品のテコ入れとして値下げを実施する可能性もほぼないと言えそうです。



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