サムスンのメモリ部門がスマートフォン部門に対してメモリの長期契約を拒否したことなどが報じられていましたが、どうやら自社製スマートフォンへの供給を後回しにする一方で、AppleのiPhone向けに優先供給していることが明らかになりました。
サムスンがメモリ供給先にGalaxyよりiPhoneを選ぶ
サムスン電子のメモリを製造するDevice Solution(DS部門)は最近、同社のスマートフォン部門(MX部門)からのLPDDR5X長期契約の要請を拒否し、3カ月単位の契約を通知したことが報じられていました。
この背景としては高騰するDRAM調達コストを抑えるためで、MX部門は2026年に発売するGalaxy S26シリーズに向けてコスト低減を図りたい意向でした。しかし、DS部門はこの要請に対して身内に売るより外部販売をした方が高い収益を得られると判断したとされています。
しかし、どうやらサムスンのDS部門の外部販売先はNVIDIAやAMDなどではなく、サムスンGalaxyの直接的ライバルであるiPhone向けであることが明らかになったようです。
iPhone 17向けのLPDDR5Xを70%ほど供給へ
韓国経済新聞によると、サムスンはここ最近の汎用DRAM不足に対して、圧倒的な生産能力を武器に収益を拡大させているようです。これまでAppleのiPhone向けLPDDR5Xは、SK Hynixとサムスンがほぼ同程度のシェアで供給していましたが、iPhone 17シリーズではサムスンが最大70%に達する供給シェアへ拡大させているとのことです。
この主な理由としては、SK HynixやMicronなどLPDDR5Xを製造するメーカーの多くがHBM生産を優先しているという背景があり、Appleが求める供給量を確保できなかったものと見られています。実際に業界関係者によると「SK HynixがHBMに集中する状況で、Appleの条件を満たせるのはサムスンだけ」というポジションになっているようです。
Appleの厳格な基準もクリア
Appleは国際半導体標準協議会(JEDEC)の規格を上回る独自仕様「Apple Spec」をサプライヤーに要求します。特に「製品偏差」に敏感で、数千万台規模の納品すべてが同一性能を維持する必要があります。
さらに、このLPDDRはチップセットに統合されることから長時間の動作安定性も必須条件で、瞬間的な電圧変動すら許容されません。一方で、サムスンのLPDDR5X 12GB製品は厚さ0.65mmの薄型設計を実現しつつ、熱抵抗を前世代比21.2%低減、消費電力を25%改善しているなど性能的に優れていることもAppleとの契約に結び付いた背景といえるようです。
iPhone 18シリーズに向けへの供給も確定済み
Appleはすでに iPhone 18シリーズでもサムスン製LPDDR5Xを採用することを決めており、同社に対して供給契約に向けた協議を行っているとのことです。この発注にはSK Hynixなど他社も含まれる可能性はあるものの、iPhone 17シリーズと同じくサムスンが大部分を供給するものと見られています。
ただ、サムスンに関しては冒頭で紹介した通り、Galaxy S26シリーズについては量産まで間もないにもかかわらず協議が破綻しています。都度契約を求められており、最新の情報ではMicronと緊急協議をするとまでいわれています。一方で、サムスンはAppleに対しては1年近く先の製品の協議に応じるなど、その扱いに大きな差があるといえます。
そのため、サムスンのDS部門では高い収益を得られるNVIDIA向けメモリや、圧倒的な調達数が見込めるAppleなど収益が望める企業を最優先と考える動きが鮮明で、身内であっても例外はないという状況のようです。
SK HynixやMicronなどはNVIDIAなどAIチップ向けにHBMの供給を最優先とする一方で、サムスンはこの動きによって空いた汎用DRAMの穴を埋める形で勢力を拡大していっているようで、HBMで出遅れていた同社にとっては好都合といえそうです。
ただ、その一方で汎用DRAM価格高騰で苦しい立場に置かれているスマートフォン事業についてはかなり冷遇されているといえ、Micron CEOとLPDDR5Xの供給に向けて緊急協議を行うなど同じグループ企業とは思えないような扱いを受けています。
そのため、今後サムスンのメモリを作るDS部門とスマートフォンを作るMX部門のいざこざの行方や、Galaxyスマートフォンの価格競争力などはメモリ価格と共に注目を集めることになりそうです。


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