TSMC熊本第二工場で2nm製造を検討中。6nmや4nmでは競争力がないため?

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TSMCは熊本に位置する工場について第二工場の建設に着手していますが、当初計画されていた6nmプロセス半導体の製造から4nmへ変更される可能性が過去に報道されていました。しかし、台湾メディアによるとTSMCはこの熊本第二工場について、4nmよりさらに先端プロセスとなる2nmプロセスを製造する案が検討されていることが明らかになりました。

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TSMC熊本第二工場は2nmプロセス製造に切り替えられる可能性

TSMCは日本の熊本県に製造工場をJASMとして建設しましたが、28nmプロセスというレガシープロセスを採用した工場となっています。この28nmは主に自動車向け半導体をターゲットにしたもので、TSMCは当初、自動車部品メーカーからの受注を期待していました。しかし、EV需要の減少により自動車向け半導体に対する需要が低下しています。この受注減によりTSMC熊本工場の稼働率は低下しており、工場の収益は赤字に直面しています。

そのため、TSMCは2027年に稼働予定の熊本第二工場では、自動車以外の需要が取り込める6nmプロセス製造を担う計画で進めていました。しかし、この6nmはすでに稼働率が6〜7割程度に低迷していることから、熊本第二工場の6nm計画は2025年12月頃には撤回が発表され、より先端プロセスとなる4nmへの変更が明らかにされていました。

しかし、どうやらこの4nmでさえも熊本第二工場が稼働する2027年には需要減少に直面している可能性が高いようです。そのため、TSMCはNVIDIAやAMDなど大口顧客の獲得が期待できる2nmへの切り替えを検討しているとのことです。

2nmの需要は高いが設備投資が約4兆円必要に。Rapidusとの競合も懸念

台湾メディアの鏡週刊よると、TSMC第二工場の稼働開始が予定されている2027年には、当初計画されていた6nmは需要が見込めないとされています。また、最近報道された4nmプロセスについても、2027年にはNVIDIAやAMDなどTSMCへ発注する多くの顧客が2nm以降へ移行している可能性が高いと見られています。実際に、6nmについても量産開始から3年で稼働率が5割を割り込んでいるため、2023年に量産開始した4nmは採用リスクが高いと判断されているようです。

そのため、TSMCは熊本第二工場について2nmの製造を検討しているようですが、複数の課題も存在します。1つは設備投資額の大きさです。当初の6nmの投資額は1.6兆円ほどでしたが、2nm化を進めると投資額は3.9兆円に達する見込みで、投資額の高さが課題として挙げられています。

また、2nm投入には日本政府との関係性も課題として挙がっています。日本では2028年頃に、日本政府やトヨタ、ソニー、NTTなどが出資するRapidusが2nmの量産を計画しています。直接競合する場合、政府補助金額が減額されるなどの可能性も懸念されているようです。

2nmプロセスの需要増も追い風。TSMCの先端プロセス拡大方針にも合致

2nmプロセスは2025年に量産開始された最先端プロセスですが、AIブームや高い電力効率を背景に高い需要が見込まれています。2026年まではキャパシティいっぱいまで受注を獲得していると言われています。

そのため、TSMCは2nmプロセスの新工場を追加で建設中で、アメリカのアリゾナ工場でも2nm工場の前倒しが行われています。また、TSMCは将来的に先端プロセスの売上比率を8割以上に引き上げる方針を明らかにしています。4nmや6nmは2027年時点では先端プロセスとは言い難いため、熊本工場についても2nm化が行われても不思議ではありません。TSMCの本気度や日本政府がどれだけ補助金を出すかなど、今後の行方が注目されます。

コメント・考察

TSMC熊本第二工場については6nmから4nmへの切り替えが明らかにされたばかりですが、本文の通り4nmも稼働が計画されている2027年時点では古めの製造プロセスになります。採用製品も高収益が期待できるAI向けは期待できず、ミドルレンジ以下のコンシューマー製品中心になるなど、稼働率や採算性の面でリスクのあるプロセスであったと言えます。

一方で、2nmは2027年時点のAI向け製品での採用が期待できるほか、AppleやQualcomm、AMD、NVIDIAの主力なコンシューマー向け製品でも採用が期待できるため、収益面や需要面では4nmよりも将来性が高いと言えます。

ただ、問題はRapidusとの関係性です。TSMC 2nmとRapidusの2nmはバッチ式と枚葉式という製造方式の違いがある一方で、顧客獲得という観点では競合する可能性もあります。どれだけ補助金を投入できるのか、また先端技術の重要性を理解していない層からの批判対策なども必要になるなど、課題は多いと言えそうです。

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この記事を書いた人

Kazukiのアバター Kazuki 編集兼運営者

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
自作PC歴は10年以上、経済などの知識もあるため、これらを組み合わせて高い買い物でもある自作PCやガジェットをこれから買おうと思ってる人の役に立てるような記事を提供できるよう心がけています。

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