DRAMの品薄や値上がりにより、最近のPCに必要不可欠なDDR5の価格は大きく上昇しています。そんな中、海外ではこの値上がりやパニック買いを狙った偽のDDR5がAmazonから届いたという事例が報告されています。
DDR5価格高騰で新手の詐欺行為が発生
DRAMの品薄や価格高騰によりDDR5の価格は暴騰しており、2025年上半期と比較して現在の価格は3〜4倍に達しています。EXPOやXMPに対応していないベーシックな16GB×2枚セットのDDR5でさえ、6万円を超える価格で販売されている状況です。
そんなDDR5ですが、この価格高騰に目を付けた詐欺業者がDDR4モジュールにDDR5製品のヒートシンクを取り付け、Amazonへ流通させているようです。
Corsair Vengeance DDR5のヒートシンクをDDR4に付けた偽装DDR5が発見される
RedditユーザーのLeading-Growth-8361氏がAmazon.comからCorsair Vengeance DDR5メモリキット(2枚組)を購入したところ、PCへの組み込み時にマザーボードのスロットへ物理的に装着できないことが判明しました。



同氏によると、届いた製品はヒートシンクの取り付けが緩い状態だったとのことです。不審に思いながらもそのままPCの組み立てを続けたところ、メモリがスロットに収まりませんでした。ヒートシンクを外して確認したところ、中身は出所不明のDDR4モジュールだったことが発覚しました。
DDR5とDDR4はメモリモジュールの端子部分にある切り欠き(ノッチ)の位置が異なります。DDR5は288ピン構成で切り欠きが端子部のほぼ中央に位置する一方、DDR4も288ピンながら切り欠きは中央から若干ずれた位置にあります。この設計上の違いにより、DDR4モジュールはDDR5スロットに物理的に装着できず、誤挿入を防ぐ仕組みになっています。今回の事例では、この物理的な非互換性によって被害者は詐欺に気づくことができました。
Amazon販売の製品ですり替えが発生。サプライチェーン上での製品すり替え?
今回、Leading-Growth-8361氏はAmazonのサードパーティ出品者からではなく、Amazon自身が販売・発送した製品で被害に遭ったとのことです。
どのようにして偽装品が送られてしまったか詳細は不明ですが、いくつかの可能性が考えられます。悪意のあるユーザーが正規品のDDR5をAmazonで購入後、偽装品にすり替えて返品し、それが今回のユーザーの手に渡ってしまった可能性があります。また、そもそもサプライチェーンの上流段階で製品が偽物にすり替えられていた可能性も否定できません。
特にサプライチェーン上でのすり替えについては、2025年初頭にGeForce RTX 5090やRyzen 7 9800X3Dの価格が高騰していた際、Micro Centerなど大手PCパーツ小売店で偽装品が混入する事件が発生しています。今回も同様の手口で犯行が行われた可能性があります。
Amazonで購入時は「LPN」ラベルに注意を。得体のしれないサードパーティ出品者も増加中
日本のAmazonではサプライチェーン内部の犯行で製品がすり替えられるといった事案は確認されていないと見られています。しかし、返品時に偽装品にすり替えられ、別のユーザーの手元に届くという事案は発生しています。

偽装品に対する自衛策として、Amazonから届いた際にパッケージを確認することが重要です。「LPN」から始まるラベルが貼られている場合、それは一度返品された製品です。万が一このラベルが付いていた場合は、動画を撮影しながら開封することで、偽装品だった際の対応を円滑に進められます。

また、AmazonではDDR5が相場より大幅に安い価格で販売されているケースもありますが、その多くはサードパーティ出品者によるものです。このサードパーティにはドスパラやGIGABYTEなど正規店が出品しているケースもありますが、DDR5のように価格が高騰している製品には悪意あるサードパーティ出品者が集まる傾向があります。
そのため、AmazonでDDR5など値上がり傾向のある製品を購入する際は、可能な限り出荷元・販売元がAmazonである製品を選ぶことをお勧めします。また、仮にサードパーティから購入する場合も、レビュー件数が少なかったり、評価が★4に満たない出品者は避けることが推奨されます。
DDR5はPCパーツの中で最も偽装品が作りやすい部品とも言えます。基板とメモリモジュールのような部品を容量に合致する数だけ搭載すれば、比較的簡単に偽造できてしまいます。
また、今回のようにDDR4にDDR5製品のヒートシンクを付ければ、多くの人は開封しても違和感を感じず、マザーボードへの装着を試みるまで発覚しない可能性が高いです。詐欺を働く人間にとっては格好のターゲットと言えるでしょう。
そのため、直近でDDR5を購入する方は開封時に動画撮影をするなど、自衛策に努めることが求められます。価格以外にも神経を使う場面が増えることになりそうです。



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