DRAM価格の高騰により、自作PCやBTO市場では需要の大幅な冷え込みが懸念されています。こうした状況を受け、BTOの販売価格を抑えるため、メモリ非搭載を選べるカスタマイズオプションが海外で登場し始めました。
メモリ価格高騰でBTOメーカーに影響。メモリ非搭載化
AI需要などを背景としたDRAM需要の急増により、メモリ価格の高騰や品薄が日々深刻化しています。日本ではマウスコンピューターをはじめとするBTOメーカーが値上げを発表するなど、メモリ価格の上昇がPC価格全体に波及しています。
一方で、価格を上げすぎれば販売台数の減少につながるリスクもあります。実際、自作PC市場では2025年11月のマザーボード販売台数が前年比50%減となるなど、すでに影響が表れ始めています。
こうしたメモリ価格高騰と供給不足を背景に、海外のBTOメーカーでは「届いてすぐ動く」というBTO本来のメリットを犠牲にしてでも、メモリ非搭載構成での販売を開始する動きが出てきました。
メモリはユーザーが調達。互換性問題やサポート対応に課題も
Due to ongoing RAM shortages and the price of ram skyrocketing, we are now providing the option to select no ram in the build section of our website!
— Paradox Customs (@Brparadox) December 19, 2025
If you already have RAM sticks or can source them elsewhere, feel free to use this option ✅ pic.twitter.com/rlGLPpfznC
アメリカのBTOメーカーであるParadox Customsは、一般的なBTO構成に加え、ゲーム向けにWindows 11やBIOSの最適化設定まで行うことを売りにしています。同社はここ最近のメモリ価格高騰を受け、メモリを非搭載とするオプションを新たに追加したことを明らかにしました。
Paradox側は、すでにDDR5など互換性のあるメモリを持っているユーザーが、高価なメモリの重複購入を避けられるメリットを強調しています。ただし、これは箱から出せばすぐ使える従来のプリビルトPC(完成品PC)とは異なる購入形態です。
また、通常のBTOではマザーボードとメモリの互換性を考慮したパーツ選定が行われており、メモリ関連の不具合が発生することは稀です。しかし、今回のように顧客が手持ちのメモリを使用する場合、マザーボードとの相性問題により起動ループや動作不安定、アプリケーションのクラッシュといったトラブルが発生するリスクがあります。
さらに、自社で販売していないメモリに起因する不具合については、サポート対応範囲が不明確になる可能性があります。顧客とメーカー双方にとってグレーゾーンが生まれる点も懸念材料です。
なお、現時点でこのような対応を行っているのはParadox Customsのみです。ただし、今後メモリ価格高騰や品薄がさらに深刻化すれば、他のBTOメーカーも追従する可能性があります。こうした動きが業界全体に広がるのか、今後の動向に注目が集まります。
BTOは本来、箱から出した状態ですぐに動作することが前提です。保証面でも、ユーザーがパーツ交換などのカスタマイズを行っていなければ、不具合の診断や修理を受けられるのが一般的です。
しかし、DDR5をユーザー自身が取り付ける形式では、互換性の問題や装着時の破損といったトラブルが起きた場合、保証対象外となる可能性があります。これはBTOの魅力を半減させる対応とも言えます。
とはいえ、こうした対応に踏み切らざるを得ないほどBTOメーカーも厳しい状況に追い込まれているのが実情です。今回の動きは、DDR5価格の異常な高騰を象徴する出来事と言えるでしょう。



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