メモリ価格高騰を受けてDellは法人向けPCを中心に最大30%、LenovoもノートPCで約20%の値上げを検討していると報じられていますが、この動きに追従する形でASUSやAcerなど台湾系のPCメーカーも2026年以降に値上げに踏み切ることを明らかにしました。
ASUSとAcer幹部が製品の値上げを明言
Acerの陳俊聖会長兼CEOとASUSの胡書賓共同CEOは12月15日、メモリ価格の高騰をPC販売価格に反映させることが業界共通の認識になっていると発言しました。両氏によると、DDR5をはじめとするPCのコスト上昇と価格引き上げは「現在進行形」であり、2026年上半期も状況は緩和しない見通しとのことです。
両社はクリスマスから新年にかけての年末商戦向け出荷を11月末〜12月初旬にほぼ完了しています。この年末商戦向け製品については、メモリ価格が高騰する前に確保していた部品在庫を使用しているため、現行価格での販売が可能な状況です。
しかし、2026年1月以降に工場から出荷される新規発注分から、コンシューマー向け・ビジネス向けを問わず、各社のMSRP(メーカー希望小売価格)に値上げが反映される可能性が高まっています。
DDR5価格は30~50%上昇。ただし、製品全体のコストは2~3%増に留まる見通し
DDR5価格の高騰によりノートPCなどの製造コストへの影響が懸念されていますが、Acerの陳俊聖CEOによると、メモリは製品全体コスト(BOM)の約8〜10%を占めているとのことです。そのため、第3四半期以降に見られたDDR5の30〜50%という価格上昇は、BOM全体では2〜3%程度の押し上げに留まる計算になります。
このBOMの上昇は「外部で想像されているほど劇的な影響ではない」としながらも、コスト上昇圧力への対応として、16GBのRAMを8GBに引き下げるなどのスペック調整がすでに見られ始めています。また陳CEOは「2025年第4四半期の価格は2026年第1四半期とは確実に異なる」と述べ、新規発注の出荷が始まれば値上げが行われることを明確にしています。
各社メモリー高騰を見込みパニック買い。本当の危機は2026年上期以降?
陳俊聖CEOによると、メモリ価格高騰の影響は2026年第2四半期に顕在化すると予想されています。各社がメモリ価格高騰を予測し、2025年第4四半期に2026年第1四半期分を、2026年第1四半期に第2四半期分を前倒しで発注する動きが広がっているためです。陳CEOはこの傾向が続けば、需要予測や価格戦略の策定がより困難になると指摘しました。
ASUSの胡書賓共同CEOも、メモリ価格の上昇傾向は2026年上半期まで続くとの見方を示しています。一方、陳俊聖CEOは短期的な解決は難しいとしつつも、中国のメモリメーカーが生産能力を順調に拡大できれば状況が緩和される可能性があると期待を示しており、需給の見通しは依然として不透明な状況です。
DRAM価格の大幅高騰はノートPCなどに大きな影響を与えていると考えられていましたが、ノートPC全体で見ればDDR5が50%上昇しても3%程度のコスト増で済むなど、意外にも影響は限定的なようです。そのため、値上げ理由として納得性が高いことを背景に、コスト増以上の値上げ幅を設定している可能性も考えられます。ただし、Acer CEOが指摘するように不確実性も高いため、コスト増分をそのまま価格に転嫁するのではなく、ある程度のバッファーを設けた値上げになるのも致し方ない側面があります。
なお、今後のDRAM価格についてはAcerもASUSも2026年上半期がピークになるとしていますが、パニック買いなども相まって価格の急騰や急落など先が読みにくい状況となることは確実です。PCパーツやノートPC、BTO PCなどの買い時を見極めるのはかなり難しい状態が続きそうです。



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