メモリ価格高騰で裏切り。サムスンがGalaxy向けメモリの長期契約を拒否

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メモリ価格の高騰は、これらコンポーネントを使うスマートフォンなどコンシューマー向け機器にも影響が出ることが懸念されています。一方で、サムスンなど自社でメモリを内製できる企業は、Appleなど外部調達に頼る企業より優位性があると考えられていました。

しかし、DRAMなどメモリが想像以上に高騰していることを背景に、サムスンがサムスンを裏切るような事態が発生しています。

目次

サムスンのメモリ部門がスマートフォン部門への長期契約を拒否

韓国のサムスンでは、DRAMなどの半導体を製造するDevice Solution部門(DS)や、Galaxyシリーズなど同社のスマートフォンを製造するMobile eXperience部門(MX)などが存在しています。この2つの部門は、スマートフォン向けチップセットのExynosシリーズや同社のDRAM、NANDを供給・搭載することで、サムスン全体の収益最大化を図っています。

しかし、韓国のソウル経済新聞によると、ここ最近のDRAM相場の高騰を背景に、DS部門がモバイル向けDRAMの長期契約を拒否するなど、同じ企業内で利益最大化を巡る対立が起きてしまっているようです。

LPDDR5Xの価格は年初から2倍に。MX部門がDS部門に協力を仰ぐが拒否

最近のスマートフォンでは、チップセットの高性能化に伴い供給価格が大きく高騰しています。サムスンのGalaxy S26 Ultraなどに搭載予定のQualcomm Snapdragon 8 Elite Gen 5は、前世代に対して約30%近い値上がりが予想されています。

そのため、ほかの部分でコストを抑える必要があります。しかし、ハイエンドスマートフォンでは性能が求められることから、メモリにはLPDDR5X(モバイル向け高速メモリ規格)を採用し、容量は16GBと大容量なものを搭載しています。MX部門はコスト低減に苦慮しており、さらにLPDDR5Xの相場が年初に対して2倍以上に高騰するなど、収益性の確保が難しい状態になっています。

そのため、MX部門は同社のDS部門に対してLPDDR5XなどDRAMの長期契約を結び、コスト高騰を抑えることを考えていたようです。

しかし、LPDDR5Xなどを供給するDS部門はMX部門に対して要求を拒否し、代わりに3カ月単位の契約を通知したとのことです。

この交渉は幹部を交えてのものとなったようですが、それでも結果的に、DRAMをGalaxyで使用し原価低減を行うよりも、外部販売を実施した方がサムスン全体としては収益が上がるという判断が下されたようです。

なお、これによりMX部門の収益は大きく悪化する見込みです。DRAM高騰が含まれていない2025年第3四半期の決算では、MX部門の支出のうち原材料購入が占める割合は前年同期の16.6%から19.1%へ上昇しており、DRAM値上げが反映されれば20%を超えることが予想されています。

スマートフォンはさらに高騰?

一般的にスマートフォン原価では、SnapdragonやExynosなどチップセットが約20%、メモリが約15%程度を占めるとされています。LPDDR5Xの価格が急上昇したことで、原価に占める比重が少なくとも5ポイント以上上昇するという分析も出ています。そのため、MX事業部は来年初頭に発売予定のGalaxy S26シリーズの価格戦略について頭を悩ませている状況と見られています。

一方で、DS部門の中でも特にメモリ系は高い収益を出せていない状態が続いていました。そのため、この機を逃すことはできないと息巻いている状態で、特にDRAM市場で圧倒的なシェアを持つことを背景に、契約価格を毎月見直すなど強気な価格交渉に出ているとも言われています。たとえ身内であっても収益を重視する姿勢のようです。

コメント・考察

サムスンのスマートフォンを巡っては、最近の調査で出荷台数がAppleに抜かれたという話が出ています。そのため、Galaxy S26シリーズでは値段を据え置きとしつつ、性能や機能などをアピールして巻き返すことが求められています。

内製のLPDDR5Xを活用することで他社より安価に調達できれば価格競争力が期待できましたが、DS部門の決定によりこの算段は崩れてしまったといえそうです。Galaxy S26シリーズに関しては、収益を減らしてでも販売台数を確保するか、収益を維持する代わりに販売台数減少を受け入れるかという判断に迫られると考えられます。最終的には本体価格の値上げなど、消費者に影響が出ることが懸念されます。

なお、今回サムスンがサムスンを裏切るような形にはなっていますが、スマホを売るよりもDRAM価格高騰で外部へ卸した方が得られる利益が高いということで、DS部門は今回の決定を行ったといえます。サムスン全体として見た時には正しい判断といえるでしょう。

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ソース

[단독] 삼성 반도체, 갤럭시 D램도 분기별 계약 | ソウル経済新聞

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この記事を書いた人

Kazukiのアバター Kazuki 編集兼運営者

『ギャズログ | GAZLOG』の編集兼運営者
幼い頃から自作PCなどに触れる機会があり、現在は趣味の1つに。
自作PC歴は10年以上、経済などの知識もあるため、これらを組み合わせて高い買い物でもある自作PCやガジェットをこれから買おうと思ってる人の役に立てるような記事を提供できるよう心がけています。

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