NVIDIAのグラフィックスカードは、GPUとVRAMをセットでAIBに卸す供給方法が取られています。これにより品質の担保のほか、AIBに対してVRAMを安定した価格と供給量で提供することが可能になっていました。
しかし数日前、NVIDIAがDRAM不足を背景にGPUのみを供給し、VRAMはAIB独自調達に切り替える可能性があるという噂が浮上しました。これに対し、別のリーカーがこの噂は根拠のないデマだとして強く否定しており、情報が錯綜しています。
NVIDIAがAIBに対してGPUとVRAMのセット供給取りやめはあり得ない?
NVIDIAはこれまでASUSやGIGABYTEなどのAIBがグラフィックスカードを製造するために、GPUチップとGDDR6XやGDDR7などのVRAMをセットで供給してきました。NVIDIA側は性能や品質を担保でき、AIB側は大量調達によるコストダウンや互換性検証の省略が可能になるなど、双方にとってメリットのある手法でした。
しかし先日、中国のリーカーである金猪升级包氏が「NVIDIAはAIBへのGPU+VRAM同梱供給を廃止し、GPUチップのみを供給する方針に転換した」と報告。小規模AIBはメモリーメーカーとの取引実績がないため調達が困難になり、事業撤退に追い込まれる可能性があるとの懸念が広がっていました。
しかし、このリークについて、AIB関連のリーク情報を多く発信する中国の博板堂は「NVIDIAがGPUとVRAMのセット供給を取りやめることはあり得ない」として強く否定しており、情報が錯綜しています。
NVIDIAからVRAM供給が無ければAIBの多くは事業困難に
噂は完全なでたらめであり、何の根拠も何の論理もない。NVIDIAおよびAIBの長期的な協力戦略とはまったく相容れないものだ。GPU+VRAMバンドルモデルの分離など絶対にあり得ない。
VRAM価格がすでに2倍に高騰しており、今後さらに2倍、3倍になったとしても、NVIDIAとAIBがGPUとVRAMを切り離すことはあり得ない。こんなことを考えたり、こうした戦略変更を実行しようものなら、AIBブランドは必ず衰退の道をたどることになる。
なぜなら、NVIDIAはAIBが到底持ち得ない優位性を持っているからだ。NVIDIAはDRAMメーカーにとって最大の顧客であり、当然ながらVRAM調達における影響力と価格交渉力は世界最高レベルにある。他のどの顧客よりも強い調達力を持っており、AIBメーカーなど比較にもならない。
博板堂(高手一号)
博板堂では、金猪升级包氏のリークに対してNVIDIAの調達力を背景にGPUとVRAMを分離して供給することはあり得ないと主張しています。仮にそのようなことをすれば、多くのAIBは事業撤退など衰退の道を辿ることになるとしています。
特にNVIDIAはデータセンターで最も重宝されているGPUを製造しており、DRAMメーカーに対して絶大な影響力を持っています。そのため、その調達力や価格交渉力は世界屈指であり、AIB単独での調達は現実的ではないとしています。
NVIDIAとしても、AIB独自調達に切り替えて価格高騰や供給困難を招き、AIBの事業撤退によってグラフィックスカード全体の販売が落ち込むよりも、多少コストや手間がかかってもAIBへVRAMを供給し続けることが現実的なようです。
真相は不明もNVIDIAがサプライチェーン戦略見直しが検討されている可能性は高い
今回、真っ向から対立する噂が出ていますが、現時点でどちらが正しいのかは不明です。
ただし、コンシューマー向けにも採用されているGDDR6/GDDR7などのVRAMは供給が逼迫しています。一方で、NVIDIAとしては特にGDDR7などをRTX PRO 6000 Blackwellといった単価の高いワークステーション向けGPUへの供給を優先したいという思惑があると考えられます。
そのため、利益の最大化を目的にコンシューマー向けグラフィックスカードのサプライチェーン戦略の見直しを検討している可能性は十分考えられます。NVIDIAのグラフィックスカードを巡る動向には今後も注目が集まりそうです。
NVIDIAがGPUとVRAMのセット供給を取りやめるというのは、平時であればまだ耐えられたと考えられます。しかし、今の市況では恐らくどのAIBにとっても致命傷となる変更だといえます。そのため、NVIDIAがコンシューマー向けグラフィックスカードで今後も事業を続ける場合はあり得ない選択肢であるとする主張は正しいといえます。
ただ、その一方でNVIDIAも毎四半期の決算で市場予想以上の収益を上げる必要に駆られています。データセンターやエンタープライズ向け製品など高収益事業のために、低収益のコンシューマー向け事業の優先順位を落とすという判断も十分合理的です。そのため、現時点ではVRAM供給を継続するか取りやめるか、どちらもあり得る状況です。
どちらにせよ、VRAMの供給価格は上がっているため、グラフィックスカードの値段が今後大きく上がる可能性は高いです。購入を迷っている場合は早めに購入した方が精神衛生上良いといえます。



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