Intelはファウンドリー事業を展開していますが、今のところ目立った顧客獲得はできておらず、苦戦を強いられています。しかし、アナリストによると、IntelはAppleのMac向け次世代チップセットであるApple M7の製造に向けて協議を進めているとのことです。
AppleがIntel 18A-Pプロセス採用に向けたNDA契約を締結
アナリストのMing-Chi Kuo氏によると、AppleはIntelとの間でIntel 18A-Pプロセスでのチップ設計を可能とする先進PDK(プロセスデザインキット)バージョン0.9.1GAを入手しているとのことです。PDKとは、特定の製造プロセスでチップを設計するために必要な技術情報やツール一式を指します。
Intel expected to begin shipping Apple’s lowest-end M processor as early as 2027
— 郭明錤 (Ming-Chi Kuo) (@mingchikuo) November 28, 2025
There have long been market rumors that Intel could become an advanced-node foundry supplier to Apple, but visibility around this had remained low. My latest industry surveys, however, indicate that…
このPDKを用いてAppleは次世代チップセット開発に向けた主要な作業を進めており、進捗状況は順調です。現在はIntelからPDK 1.0や1.1などの開発キットの入手を待っている段階とのことです。
また、Appleの計画ではIntel 18A-Pを使用したチップセットはエントリー向けを想定しており、2027年第2四半期から第3四半期に製品へ搭載することを計画しているようです。スケジュール通り発売される場合、Apple M7などとして市販化される見込みです。ただし、現時点で明らかになっているスケジュールは、Telから予定通りPDK 1.0など最終版の開発キットを入手できるかにかかっています。
Intel製造のM7採用機種はMacBook AirやiPad Proなどエントリーモデルに限定
Intel 18A-Pで製造されるチップセットは、Appleのエントリー向け製品に採用される予定です。現行のM4のようにMacBook AirやiPad Pro、エントリーモデルのMacBook Proに搭載される可能性が高いと見られています。
そのため、出荷台数としてはすべて合わせて2000万台程度に達すると考えられます。採用が実現すれば、Intelは非常に大きなチップ出荷量を確保できることになります。
ただし、ハイエンドモデルに採用されるApple M7 ProやM7 Maxなどは引き続きTSMCでの製造が行われる見通しです。
AppleはTSMC依存を下げる意図
Appleは長年、同社のチップセットをすべてTSMCに製造委託しています。しかし近年、TSMCは市場シェアを独占していることを背景に強気な価格設定を行っており、値引き交渉にも応じない姿勢を見せています。
また、TSMCのチップが製造されるのはほぼすべてが台湾であり、地政学リスクの観点からもTSMC一社に根幹となるチップセット製造を依存することへの懸念があります。そのため、AppleとしてはTSMCに対して価格引き下げを促すとともに、依存度を下げることでリスクの低減を図る狙いがあると考えられます。
Intelにとっては復活の試金石に
Intelのファウンドリ事業は2021年に発表され、NVIDIAなど一部の大手企業が採用を検討していることが明らかになっています。一方で、Qualcommは「現時点では選択肢にない」と公言するなど、商業面・技術面の課題を完全には克服できていない状況が続いていました。

特に懸念されてきたのが歩留まりの問題です。TSMCの2nmプロセスに対抗できると言われるIntel 18Aプロセスですが、最近まで商業化に必要な歩留まりを達成できていないとの指摘がありました。
しかし、Intelはこの課題について解決の目処をつけたようです。実際に、Intel 18Aを採用するPanther Lakeは2026年初頭に発売予定です。また、同プロセスを採用するサーバー向けCPUのClearwater Forestも同年中に量産が開始されると見られています。
今回Appleが採用を検討しているIntel 18A-Pは、Panther Lakeで採用される18Aプロセスをベースに電力効率を最適化した改良版です。ベースとなる18Aからさらに改良が加えられていることから、歩留まりについても向上していると考えられます。
Appleが正式に採用を決定すれば、Intelファウンドリの評価は大きく向上する見込みです。TSMCの強気な価格設定に対して明確な代替選択肢を示すことにもつながり、Intelのファウンドリ事業にとって大きな転換点となる可能性があります。
Intelファウンドリは、米国内での製造が可能な点やTSMCと比較してコスト面で優位性があるとされ、一定の競争力を持っています。しかし、これまでNVIDIAやQualcommといった大手企業が採用を決定したという報道はなく、歩留まりなど製造プロセスの根本的な部分に課題を抱えていたと見られていました。
今回、AppleがPDKを取得し実際に開発を進めていることが事実であれば、歩留まりが量産化に耐えうる水準まで改善してきている可能性があります。Appleのような要求水準の高い企業が採用を検討しているという事実自体が、Intelファウンドリの技術的な成熟を示す材料となり得ます。
今後、AppleがIntelファウンドリの採用を正式決定するのか、またその場合に他社の採用も続くのかは、Intel復活の行方を占う重要な指標となります。ファウンドリ事業の立て直しを進めるIntelにとって、この動向は今後も注目を集めることになりそうです。


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