DDR5メモリの現況:2025年11月17日週(第4週)
2025年11月10日から24日までの15日間で、DDR5メモリ市場は大幅な価格上昇を記録しました。特に注目すべきは、低価格帯製品の価格上昇率が市場平均の2〜3倍に達している点です。これはコストパフォーマンスを重視する一般消費者にとって極めて厳しい市場環境の到来を意味しており、「安いメモリを探す」という従来の購買行動が通用しにくくなっています。
DDR5 メモリー全体の値動き
メモリ価格指数(全体)は基準値100から最終日の11月24日集計では111.89に到達し、累積上昇率+11.89%を記録しています。
一般消費者が購入しやすい価格帯を示す「平均価格下位75%」は約3万7,400円から約4万3,200円へと推移し、上昇率は+15.51%に達しました。これは指数上昇率を約3.6ポイント上回る数値であり、指数が示す以上に一般消費者向けの価格帯が上昇していることを示しています。
時系列で見ると、11月10〜14日は緩やかな上昇で、メモリ価格指数は100から103.68へと+3.68ポイント上昇しました。この段階では各セグメントがほぼ同調して推移しており、需給環境に変化の兆候が現れ始めた時期と考えられます。
11月15〜19日は32GBセグメントが一時的に下落する一方、64GBセグメントはプラス推移を維持するなど、セグメント間で動きが分かれました。
11月20日以降は全セグメントで急騰が発生しています。特に11月21日には32GBが前日比+5.16%、64GBが+5.83%を記録しました。複数セグメントで同時に急騰が発生していることから、卸価格の上昇が小売価格に波及した結果と見られます。
DDR5 16GB x2 (32GB)メモリーの値動き
32GBセグメントは今回の調査期間で最も大きな価格上昇を記録しました。このセグメントは一般的なゲーミングPCなどを構成する際に主力となる容量であり、市場のボリュームゾーンに相当します。
価格指数は100.00から112.26へと推移し、+12.26%の上昇となりました。全セグメント中で最大の上昇率です。
平均価格下位75%は約3万8,900円から約4万5,400円へと推移し、上昇率は+16.55%を記録しました。15日間で約6,400円という上昇は、消費者の購買意思決定に直接影響を与える水準といえます。
このセグメントで特筆すべきは、下位25%価格帯(いわゆる「安い製品群」)の上昇率が+42.01%に達している点です。これは市場全体の上昇率の約3倍に相当します。従来存在していた低価格帯の選択肢が市場から消滅し、残った製品の価格が急騰している構図です。
エントリー価格帯(最安値〜下位25%平均)の変化を具体的に見ると、期首の約1万6,200円〜約2万3,800円から、期末には約2万1,200円〜約3万3,900円へと大幅にシフトしました。下限が約5,000円、上限が約1万円上昇しています。
期首に予算2万円で下位25%平均以下の製品から選択可能だったユーザーは、期末には最安値にすら届かない状況となりました。予算3万円のユーザーも、期首は余裕を持って選択できましたが、期末にはほぼ最安値付近の製品に限定されています。
また、価格帯間のギャップが縮小している点も重要です。下位25%から下位50%へのギャップは約7,100円から約5,300円へと25%縮小し、下位50%から下位75%へのギャップも約7,900円から約6,100円へと22.6%縮小しました。
従来は明確に存在していた「安い製品群」「中間価格帯」「やや高い製品群」の境界が曖昧になり、全体的に中〜上価格帯へ収斂しつつあります。消費者にとっては選択の幅が狭まり、「安くて良いもの」を探す余地が減少している状況です。
在庫率と価格の関係を見ると、在庫の減少と価格上昇が明確に連動していることが確認できます。
DDR5 32GB x2 (64GB)メモリーの値動き
64GBセグメントは32GBセグメントに次ぐ上昇率を記録しました。クリエイターやプロフェッショナル層が主なターゲットとなる容量帯です。
価格指数は100.00から111.05へと推移し、+11.05%の上昇となりました。
平均価格下位75%は約7万8,000円から約8万7,900円へと推移し、上昇率は+12.67%です。32GBセグメントよりも上昇幅は小さいものの、金額ベースでは約1万円の上昇であり、決して無視できない変動となっています。
興味深いのは、最安値自体は約3万2,700円で変動がなかった点です。一部の低価格製品は市場に残存していますが、そのすぐ上の価格帯が大幅に上昇しています。消費者から見ると「最安値は変わらないが、その次の選択肢が一気に高くなった」状況であり、「最安値製品か、それより1万円以上高い製品か」という極端な二択を迫られる状況が生まれています。
在庫率と価格の関係では、全セグメント中で最も強い連動性が確認されました。在庫率が7割強から6割半ばへと低下する中で価格が上昇しており、供給制約が価格形成に直結している構図が明確です。また、価格上昇に対して需要が敏感に反応する傾向も見られ、価格が上がると在庫率が比較的早く低下する関係が成立しています。
DDR5 64GB x2 (128GB)メモリーの値動き
128GBセグメントは他のセグメントと比較して明らかに安定した推移を示しました。ワークステーションやサーバー用途という特性上、価格感応度の低い法人需要が中心であることが影響していると考えられます。
価格指数は100.00から107.49へと推移し、+7.49%の上昇にとどまりました。全セグメント中で最も低い上昇率です。
平均価格下位75%は約17万2,600円から約17万9,600円へと推移し、上昇率は+4.03%です。32GBセグメント(+16.55%)や64GBセグメント(+12.67%)と比較して大幅に低い水準となっています。
このセグメントでは低価格帯製品への需要圧力が相対的に弱く、高価格帯製品(平均約26万円)が主体となっています。在庫率も8割超と高水準を維持しており、供給制約ではなく為替や原材料コストなど別の要因が価格形成に影響していると推測されます。
なお、このセグメントでは平均価格(約26万6,000円)と中央値(約18万9,000円)に大きな開きがあります。これは一部の超高価格製品(最高値62万円超)が平均を引き上げているためです。
11月19日にメモリ市場全体の最高値が約51万9,000円から約62万2,000円へと一気に20%上昇しましたが、これは128GBセグメントの超ハイエンド製品の新規投入または価格改定によるものと推測されます。ただし、この最高値更新が一般消費者の購買対象価格帯に与える直接的な影響は小さいでしょう。
メモリー市場へ転売ヤーの参戦は見られず
PCパーツの価格高騰が発生すると転売ヤーがさらに混乱を招くことは、グラフィックスカードの品薄時に度々発生していました。しかし、メモリに関しては転売行為が過熱しているとまでは言えません。
ヤフオクの落札相場を見ると、特に人気のDDR5 16GB×2(32GB)を中心に落札件数と落札の平均価格が右肩上がりになっています。
DDR5 16GBx2 (32GB) - 日次価格推移 (90件表示)
ただし、新品・中古品の内訳で見るとほとんどが中古品の出品です。これは容量の拡充などで余剰となったDDR5を出品している人が増えてきていることを示しており、転売ヤーが新たに参入してきている状況ではありません。
DDR5 32GBx2 (64GB) - 日次価格推移 (68件表示)
この傾向は32GB×2(64GB)など価格帯が高い製品でも同様で、中古品の出品がほとんどとなっています。
ただし、メモリ価格の高騰は最近さまざまなメディアで話題になり始めているため、今後転売ヤーが増える可能性はあります。とはいえ、メモリはグラフィックスカードほどシンプルではなく、速度やCUDIMM/UDIMM/DIMM、メモリタイミングなどのリサーチが必要です。そのため、グラフィックスカードほど転売が過熱することはなさそうです。
今後の価格動向と購入アドバイス
調査期間終盤では価格上昇が鈍化し、指数は111前後で安定化しています。急騰後の「踊り場」を形成している状況ですが、在庫率が継続的に低下している点は懸念材料です。供給回復がなければ、次の上昇局面が早期に到来する可能性があります。
12月に向けた年末商戦期はメモリ需要が季節的に高まる時期です。自作PC需要やゲーミングPC需要が活発化する中、現在の在庫水準で需要を吸収できるかが焦点となります。需要増加に対して供給が追いつかない場合、さらなる価格上昇が発生する可能性は高いでしょう。
また、今回明らかになった低価格帯製品の選択肢減少は、価格を重視する消費者層(学生、初心者ビルダーなど)にとって厳しい状況です。パーツ価格に影響を与える為替動向やDRAMスポット市場の動向など、マクロ要因のリスクも引き続き注視が必要です。
11月初旬の急激な価格高騰にはパニック買いの側面もありましたが、その後2週間の価格推移を見ると、構造的な供給不足に起因する上昇であることが明確になってきています。下位75%平均が15日間で15%超上昇し、低価格帯製品の選択肢が急速に減少している状況は、短期的に解消される見込みが薄いことを示唆しています。
そのため、近いうちにDDR5メモリの購入を予定している場合は、現在の価格水準がしばらく続く可能性を念頭に置き、ブラックフライデーや年末年始セールなどのタイミングで購入を検討することをおすすめします。



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