AIブームの影響により大規模なデータセンター建設が各国で進められていますが、これに伴いDRAMやNANDフラッシュなどのメモリに対する需要が大きく増加しています。こうした中、データセンター建設などを進めているテック企業大手は、NANDフラッシュの供給獲得に向けて既にメモリメーカー各社と2027年分の供給交渉を進め始めているようです。
NANDフラッシュ不足でテック企業大手は2027年分の供給獲得に向けて動き始める
業界関係者によると、サムスン、SK Hynix、KIOXIAなどのメモリ半導体メーカーは、一部のテック系企業大手と2027年の供給量について協議を進めていることが確認されました。NANDフラッシュの供給制限により2026年の供給量がほぼ完売状態となり、価格上昇が続いていることから、異例にも2年後の供給量交渉が先行して実施されている状況です。
半導体業界関係者は「AIデータセンターに搭載されるeSSDを中心にNAND需要が増加しているが、生産能力には限界がある」とし、「データセンターを増設している一部のテック系企業大手が供給量確保のため、すでに供給交渉に入っている」と説明しました。
需要が供給を5%上回る見通しも
AI市場の成長に伴い、NAND需要も連動して増加しています。ハナ証券のキム・ロクホ研究員は「2026年のNAND需要は前年比18%増加すると予想されるが、需要は供給を5%上回る」と分析しました。
世界3位のNANDメーカーであるKIOXIAは決算発表で、2025年から2029年までNAND市場が年平均20%の成長率を記録し、AI分野を中心に需要が拡大していると説明しました。同社は2029年までにNAND需要の約半分をAI関連製品が占めると予測しています。
各社はDRAMとHBMに集中。NANDの増産には消極的
需要増加にもかかわらず、大半のNANDメーカーは積極的な投資よりもメンテナンスと先端プロセスへの転換に注力しており、価格上昇が加速しています。NAND市場で世界1位と2位のサムスンとSK Hynixが新設する生産ラインは、HBMと汎用DRAMに集中しており、NANDについては追加増設よりも先端プロセスへの転換投資が主となっているため、供給が需要に追いついていない状況です。
なお、このNANDの需要増は既にコンシューマー向けSSD市場にも影響が出始めており、人気が高い2TB SSDは2025年11月10日から11月20日までの10日の間に5%もの値上げが見られるなどDDR5などDRAMと同じ状況になっています。また、今後もNAND増産に向けた動きは鈍いことは明らかであるため、今後も値上がり傾向が続くと考えられています。
メモリー不足はどちらかと言うとDDR5やGDDR6/7などDRAM系が焦点に上がりやすいですが、これらの製品は利益率が高い事から各社、大幅な増産には積極的ではないものの工場自体は建設されるなど需要増に対応することは可能になっています。一方でSSDなどに使われるNANDについては新しい工場は積極的には建設されていないほか、長年低い収益に苦しんでいたことから各社増産には消極的になっています。そのため、長期的にみるとDRAM系の値上がりはどこかのタイミングで落ち着くと予想されそうですが、NANDに関してはDRAM以上に酷い値上がりが発生する可能性があります。そのため、SSDに限らずMicroSD Expressなどフラッシュ系ストレージの増設を考えている人は早めに買っておいても損はしないと思います。



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