AIブームを背景に、ここ最近はグラフィックカード以外にもメモリーやSSDなどが供給不足に陥り価格高騰に見舞われていますが、どうやらこの影響によりHDDの納期は長期化し、さらにSSD需要を高めてしまっているようです。
エンタープライズ向けHDDの納期が2年待ちに
AIやデータセンターにおいてはここ最近はHDDより性能そして消費電力面で有利なSSDの価格が下がってきたことを背景にSSDの採用が増えており、これらが原因でSSD価格の大幅上昇が発生している状況です。ただ、HDDも依然としてコールドストレージとしてコストパフォーマンスが高いことから非常に人気のようです。
Digitimesによると現在、企業などがエンタープライズ向けに提供されている大容量HDDを発注しても注文数が非常に多い事を背景に、納期まで約24カ月(2年)待ちと言う状況になっているようです。
HDD納期まで待てないためSSDへ需要が流れた?
データセンターなどを積極的に建設しているGoogleやMeta、Microsoftなどの企業にとってAI関連への投資は待ったなしの状況で、長いリードタイムは許容できない状況です。そのため、このHDD不足に対して、各社は低コストで大容量化が可能なQLC NANDを採用するSSDを積極的に調達する動きを加速させているようです。
ただし、これらの企業がQLC NANDの大量調達に動いたことで、次はQLC NAND自体の供給不足が発生してしまっているとのことで、既に2026年分の注文はすべて予約済みになっているNANDメーカーも出てきているようです。
既に影響が出始めているコンシューマー向けSSD市場はさらに値上がり?
コンシューマー向けSSDとしてはTLC NAND採用製品が多く、QLC NANDは一部のエントリー向けSSDにしか採用されていません。しかし、今後QLC NANDがエンタープライズ向けで需要が大きくなれば企業側は収益性が低いQLC採用のエントリー向けSSDの供給は絞られ、前述のエンタープライズ向けを優先的に供給することが確実と言えます。
そのため、既にSSD価格は上がり始めていますが、エントリー向け製品も価格が大きく跳ね上がる可能性がある状況と言えそうです。
HDDやSSD(NAND)などのストレージ関係は過去に何度も供給過多に陥ったことを背景に各社工場の新設などには消極的で、ここ最近でもDRAM工場はHBM需要により新規建設が行われていましたが、NANDストレージ関係での工場新設はあまり行われていません。そのため、需要に対応するためには既存工場の稼働率向上が主な対策であり、拡大する需要には対応しきれていないのが現状と言えます。
ただ、この需要拡大を見てNANDなどを製造するメーカーが工場新設に着手するかは微妙で、NAND需要後退時に稼働率が一気に低迷し収益性を大きく悪化させた過去もあります。また、MicronやSK HynixはDRAM向け工場を積極的に建設しているため、NANDにも大型投資ができるかは不透明と言え、AIブームが続く限りNANDなどを使用するストレージ関係の価格はしばらく高止まりしそうな状況です。



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