DDR5などDRAM系メモリーに関して、ここ数週間で大幅な価格高騰が発生しています。一部量販店では販売個数制限が実施されるなど、2024年9月末から1ヶ月で一部DDR5の価格が2倍に高騰する異常事態となっています。
供給不足でサムスンはDDR5の新規受注を停止。さらに価格高騰?
Digitimesの報道によると、DRAM最大手のサムスンは記録的なDRAM需要の増大を受けて、生産キャパシティーのほとんどが確保される異常事態に直面しています。
このため、価格改定や供給の割当を調整する目的で、DDR5 DRAMの契約価格設定を停止するなど、受注停止に等しい対応を実施しています。
また、この動きを受けてSK HynixやMicronなど他メーカーも同様の対応を取る可能性が出ています。特にコンシューマー向けDDR5は、今後さらなる価格高騰に直面する可能性があるようです。
DDR5のスポット価格が1ヶ月で2倍に高騰
メモリ市場には「契約価格」と「スポット価格」の2つの価格体系が存在します。
契約価格は、大手企業が数ヶ月から1年単位で事前に決める固定価格です。安定供給が保証される代わりに、価格交渉に時間がかかります。
一方、スポット価格は市場で即時購入できる取引価格で、需給バランスによって日々変動します。在庫が逼迫すると急騰し、余剰があると下落する特徴があります。
今回Samsungが契約価格の提示を停止したことで、緊急調達が必要な企業はスポット市場での購入を余儀なくされました。その結果、需要が殺到してスポット価格が急騰する事態となっています。
スポット価格は2025年9月末から10月末にかけて、16Gb品(2GB)が$7.68から$15.5へと102%の価格高騰を記録しました。これは金価格やNVIDIAの株価が年初から2025年11月4日までに記録した価格高騰率を遥かに超えており、異常事態とも言える状況です。
また、DDR5以外もスポット価格は高騰しています。DDR4 16Gbモジュールは月間で90%の高騰、DDR4 8Gbモジュールも60%の上昇、DDR3 4Gbも40%の上昇と、月間の上昇率としてはどの製品も過去最高を記録しているようです。
AIブームが続く限りDRAM価格高騰は続く見通し
DRAM価格高騰の大きな要因は需要の急拡大にあります。需要拡大の主な要因は、AIブームを背景としたデータセンター建設ラッシュです。
特にAIを見据えたデータセンター投資では、Amazonが2025年会計年度の設備投資予算を1,180億ドルから1,250億ドルに拡大しています。GoogleやMeta、Microsoftも当初計画より設備投資額を上乗せしています。
この設備投資は2026年にさらに拡大が見込まれるため、DDR5や製造工程上DRAMの生産キャパシティーを大量に使用するHBMへの需要はさらに増える見通しです。DRAMの供給不足は続くと予想されます。
なお、DDR5メモリを販売するCorsairやCrucialなどの大手は、SamsungやMicron、SK Hynixなどから契約価格で調達を行っています。しかし、この契約価格もスポット価格や他社からの引き合いを含めた需要状況に大きく左右されます。
新規調達が不可能な状況となれば、各社はスポット市場での調達を余儀なくされます。そのため、今後も供給状況が不安定化すれば、販売価格が大きく高騰する状態が続くと考えられます。
DDR5の購入は早めが良い?
ここからは個人的な購入アドバイスですが、もし1年以内にPCを組み立てる予定がある場合、DDR5の購入を事前に済ませておいた方が良いかもしれません。ただし、冷静さを忘れないことが肝心です。


特に価格.comで人気の16GB×2枚や32GB×2枚といった組み合わせの製品は、11月に入ってから2倍以上に値上がりしています。スポット価格の状況が遅れて販売価格に反映される状況にありますが、逆に言えば今回のSamsungが実施した契約価格設定の一時停止を受けたパニックが反映された状態です。
また、この品薄に便乗して値上げする業者や転売ヤーなど、多くのプレイヤーが参入してしまっている状態です。
そのため、大幅な価格高騰を受けて「さらなる高値での購入を余儀なくされるのでは」という恐怖感もあるでしょう。しかし、この価格の大幅高騰は一時的なパニック買いとも考えられるため、年末年始には少し落ち着く可能性もあります。
直近でPCを組む場合を除き、冷静に価格や情報を注視することが肝心と言えそうです。当ブログでは今後もDRAMの需給状態や価格動向を重点的にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。



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