AMDは2025年10月1日、モバイル向けCPUとして新たに「Ryzen 10シリーズ」と「Ryzen 100シリーズ」を発売しました。ただし、これらは完全な新製品ではなく、既存のRyzen 7000シリーズをベースとした実質的なリブランド製品であることが製品ページから明らかになっています。
Zen 2やZen 3+製品がリネーム。Ryzen 10などが登場
AMDは2024年に登場したZen 5世代のAPUからRyzen AI 300シリーズなどモデル名を刷新しました。この新しいモデル名に基づいて、Zen 4製品などはRyzen 300シリーズなどに徐々にリネームが行われています。
しかし、AMDはZen 4のみならず、Zen 3+やZen 2など数世代前の製品に対してもリネームを実施したことが同社の製品サイトから明らかになりました。
Zen 2搭載製品はRyzen 10とAthlon 10シリーズに
Ryzen 10シリーズは、Zen 2アーキテクチャをベースとした「Mendocino」ファミリーで構成されています。ラインアップは4モデルで、Ryzen 5 40、Ryzen 3 30、Athlon Gold 20、Athlon Silver 10が用意されています。
これらのスペックを既存のRyzen 7000シリーズと比較すると、完全に一致していることが確認できます。
| 旧モデル名(Ryzen 7000シリーズ) | 新モデル名(Ryzen 10シリーズ) |
|---|---|
| Ryzen 5 7520U | Ryzen 5 40 |
| Ryzen 3 7320U | Ryzen 3 30 |
| Athlon Gold 7220U | Athlon Gold 20 |
| Athlon Silver 7120U | Athlon Silver 10 |
全モデルがZen 2アーキテクチャを採用し、TDPは15Wに設定されています。内蔵GPUはRadeon 610Mで統一されており、エントリー向けノートPCやビジネス用途を想定した構成になっています。
Zen 3+搭載製品はRyzen 100シリーズ
Ryzen 100シリーズは、Zen 3+アーキテクチャをベースとした「Rembrandt R」ファミリーで構成されています。こちらは5モデルが用意されており、Ryzen 7 170、Ryzen 7 160、Ryzen 5 150、Ryzen 5 130、Ryzen 3 110がラインアップされています。
| 旧モデル名(Ryzen 7000シリーズ) | 新モデル名(Ryzen 100シリーズ) |
|---|---|
| Ryzen 7 7735HS | Ryzen 7 170 |
| Ryzen 7 7735U | Ryzen 7 160 |
| Ryzen 5 7535HS | Ryzen 5 150 |
| Ryzen 5 7535U | Ryzen 5 130 |
| Ryzen 3 7335U | Ryzen 3 110 |
Ryzen 100シリーズについても、既存のRyzen 7000シリーズRembrandtと完全に同一のスペックであることが確認されています。
TDPは28Wと45Wの2種類が用意されており、元々HSモデルだった製品は45W、元Uモデルだった製品が28Wに設定されています。内蔵GPUはRadeon 680MとRadeon 660Mが採用されており、Ryzen 10シリーズよりも高いグラフィックス性能を備えています。
既存モデルの整理だが性能優位性はなし
今回のリネーム戦略により、AMDは既存の製品ラインアップを整理しつつ、より分かりやすい命名規則でエントリーからミドルレンジ市場に訴求する狙いがあると考えられます。
特にRyzen 10シリーズは、低価格帯のノートPCやChromebookなどで採用される可能性が高く、教育市場やビジネス市場での需要が見込まれています。Zen 2アーキテクチャは成熟しており、製造コストも抑えられるため、価格重視の製品として位置づけられます。
一方、Ryzen 100シリーズは、低価格ながら性能を求めるユーザー向けの製品として、薄型ノートPCや2-in-1デバイスなどでの採用が期待されます。Zen 3+アーキテクチャは電力効率と性能のバランスに優れているため、バッテリー駆動時間を重視するモバイルユーザーにとって魅力的な選択肢となる可能性があります。
ただし、あくまでこれらの製品はリネーム品であるため、リネーム前の製品に対して性能面での優位性は一切ありません。
リネームモデル投入の背景にはOEMへの配慮も?
AMDがこのようにリネーム品を導入する背景には、OEMメーカー側の要望もあると見られています。
OEM側としては、Ryzen 7000シリーズを採用したモデルに対して、同じスペックながらRyzen 100シリーズを採用したモデルを「新型」として販売することが可能になります。これにより価格帯を上げて販売できるほか、製品説明に「2025年登場の最新CPUを搭載」などと謳うことも可能になります。
なお、同様の対応はIntelも行っています。最近では2021年に発売されたCore i5-12400をCore 5 120としてリネームするなどの動きを見せています。
そのため、価格が比較的安めのRyzenやIntel製CPUが搭載されており、そのCPUのモデル名が3桁になっている場合は、リネーム前の製品がより安く販売されていないか確認してから購入することをおすすめします。



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