AMDのRadeon RX 9000シリーズは、AMDがこれまでに発売したグラフィックスカードの中では大ヒットとなっています。しかし、Steamハードウェア調査やAIB製GPUの出荷台数の調査では、AMD製GPUの存在感はあまりありませんでした。
ところが、少なくともオーストラリアでは比較的人気が高く、NVIDIA製GPUに迫る販売台数を叩き出せているようです。
オーストラリアの大手量販店ではRadeon RX 9000とRTX 5000がほぼ同じぐらいに売れている
AMDのRadeon RX 9000シリーズは、従来モデルよりもレイトレーシング性能が向上しました。加えて、競合のNVIDIA GeForce RTX 5000シリーズを上回るコストパフォーマンスにより、発売時のレビューは好評でした。
AMD自身もRadeonシリーズの中で初動の販売台数が多かったことを明らかにするなど、販売状況は好調と言われています。
ただし、Steamハードウェア調査では、RX 9070 XT発売から半年以上経った現在でもシェアには現れていません。また、市場調査会社がまとめるAIB製グラフィックスカードの出荷台数ベースのシェアでも1桁台を彷徨うなど、あまり大きな変化は見られていませんでした。
そんなRadeon RX 9000シリーズですが、オーストラリアのテクノロジー系YoutuberのHardware Unboxedが、同国の大手小売店からNVIDIAのGeForce RTX 5000シリーズとRadeon RX 9000シリーズの販売状況について情報を入手し、その内容を明らかにしています。
直近ではRadeon RX 9070 XTがRTX 5070 Tiを3倍程度の販売台数
Hardware Unboxedが大手量販店から入手した情報によると、Radeon RX 9070 XTは直近6ヶ月の間にRTX 5070 Tiを3倍上回る販売数だったとのことです。過去30日に限定しても2倍近い販売台数を記録するなど、絶好調な状態は続いているとのことです。
ミドルレンジのRadeon RX 9060 XTも人気で、こちらは競合のRTX 5060 Tiの2倍程度の販売となっており、消費者の嗜好もRX 9060 XTに向いているとのことです。
そして、存在感が薄めのRadeon RX 9070(無印)に関しても、過去6ヶ月全体で見たときに競合のRTX 5070に比べて70%上回る販売台数が記録されているとのことです。ただし、最近ではRTX 5070の人気も高まっているとのことで、直近1ヶ月の販売台数ではRX 9070がRTX 5070を20%上回る程度とのことです。
この好調な販売台数から、2025年に発売されたRadeon RX 9000シリーズとNVIDIA GeForce RTX 5000シリーズという括りで見ると、発売以来のシェアはRX 9000シリーズが44%であるのに対し、RTX 5000シリーズが56%と、今までは考えられなかったようなシェアに達しているとのことです。
AMDの課題はラインアップやモデル数の狭さ。NVIDIA製AIBモデルはAMDの6倍程度
販売が好調なAMDのRadeon RX 9000シリーズですが、課題もあるようです。
AIB製のカスタムモデルの数は、RX 9000シリーズが150モデル程度である一方で、NVIDIAはRTX 5090とRTX 5080それぞれで100を超えるモデルをラインアップしています。RTX 5000シリーズ全体でみると900に迫るモデルが用意されており、AIB製モデルの豊富さという観点では6倍程度に達し、NVIDIAがAMDを圧倒しています。
また、AMDは現行世代ではRX 9070 XTとRX 9070、RX 9060 XTの合計3モデルしかラインアップしていません。モデル数がかなり限られているため、同価格帯のNVIDIA製グラフィックスカードに比べて競争力はあっても、ラインアップ全体で見ると欠けている部分も多いのが実情です。
RDNA 5など次世代モデルで販売台数の拡大を目論む場合は、ラインアップの拡充やAIBパートナーを増やすなどの対応が必要と考えられます。
Steamハードウェア調査や市場調査でAMDのシェアが低い理由は?
オーストラリアは市場としてアメリカや欧州からかけ離れている訳ではなく、少なくともRadeon RX 9000シリーズは先代モデルより売れていることは確実と考えられます。しかし、その結果はSteamハードウェア調査や市場調査の結果に正しく反映されていません。
この理由についてHardware Unboxedは、中国やアジア地域では多くの販売台数があるものの、これらの地域ではNVIDIA製GPUのシェアと知名度が圧倒的であることを挙げています。さらに、現行世代GPUよりも価格面で有利なRTX 4060など旧世代のグラフィックスカードが依然として売れていることも原因としています。
実際に、Steamハードウェア調査の利用言語を見ると、英語が36.17%で1位ですが、2位には中国語(簡体字)が27.04%で入っており、アジア市場での販売台数がSteamハードウェア調査では重要となるといえます。
また、市場調査の結果については集計方法の内訳まで明らかにされておらず、OEMやBTOへの出荷台数なども含まれている可能性があるため、量販店での販売動向とは異なる結果が示される可能性があるようです。
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