PC業界ではAIブームに伴うデータセンター特需で、GPUやメモリーなどの価格が大きく上がっています。この流れはSSDにも及ぶようで、SSD用メモリーコントローラー大手のPhisonのCEOは、SSDに必須となるNANDストレージについて、2026年以降供給不足に陥り、今後10年続く見通しであるとの予測を明らかにしました。
AIによりSSDなどストレージ不足が2026年以降本格化。10年以上続く可能性
SSDなどのストレージに必須となるNANDフラッシュは、AIブームを受けた需要拡大を背景に、MicronやSamsungなど各社が値上げに踏み切っており、一部では30%以上に及ぶ値上げを計画していることがすでに明らかになっています。
ただ、このNANDフラッシュについて、NVMe SSD向けにメモリーコントローラーを製造するPhisonのCEO、Pua Khein-Seng氏によると、NANDフラッシュは需要過多を背景に2026年から供給不足に陥り、そのまま10年近く供給切迫が続く見通しを明らかにしました。
AIの普及がストレージ需要を押し上げる
AI関連の需要といえばHBMやそれらを搭載したGPUが注目されがちですが、Pua氏はNANDフラッシュストレージの需要がHBMを上回ると予測しています。
2022年以降、クラウド事業者はAIモデルのトレーニングに必要なGPUの確保に奔走してきました。トレーニングにはHBMが必要ですが、フラッシュメモリーはほとんど使われません。
しかし、多額の投資を回収するには、トレーニングしたモデルを推論に活用し、収益化する必要があります。推論サービスを提供するには、大量のユーザーデータを保存するストレージが必要です。
Pua氏は「クラウド事業者の数十億ドル規模の設備投資計画は、すべてGPUに費やされるわけではなく、むしろより大きな割合がストレージに向かう」と述べています。収益を上げるにはユーザーが必要で、ユーザーはデータを生成し、そのデータは保存される必要があるためです。
また、AIモデルのサイズ拡大に伴い、過去のモデルバージョンの保存、古いクエリの保管、あまりアクセスされないユーザーデータの保持など、ホットストレージとコールドストレージの中間に位置するニアラインストレージの需要が急増しています。
NANDフラッシュの工場新設には消極的な背景も
NANDフラッシュを製造するSamsungやMicron、SK Hynixなどは、NANDに加えてメモリー用のDRAMも作っていますが、現時点で明らかにされている新工場のほとんどは、HBMなどDRAM系を中心に製造する工場になっています。NANDフラッシュ向けに新たな工場は、2024年に日本の岩手県で稼働した北上工場の新棟だけです。
特にNANDフラッシュをめぐっては、コンシューマー向け需要に左右されてきたことから、慢性的な供給過剰と価格暴落が何度も発生しています。そのため各社、大規模な投資には慎重であると考えられています。
したがって、2026年以降にNANDフラッシュの供給不足に陥り、各社が工場新設など投資を急いでも、すぐに供給は改善されるとは言えません。実際にPua氏が言うように、数年間は慢性的なNANDフラッシュ不足に陥る可能性は十分あると言えます。
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