最新GPUはアメリカは入荷待ちに入手可能にするような法案がアメリカ議会で提出される
ゲーミング用からAI向けのGPUまで、需要が非常に大きいことから世界各国で入手困難な状況が度々発生しており、特に後者のAI向けについてはHopperやBlackwellなど最新鋭GPUは数ヶ月もの入荷待ちが発生している状況にあります。そんなGPUの供給についてNVIDIAやAMDなど最先端のGPUを開発するメーカーが存在するアメリカが、海外へ輸出する前に同国向けにチップ(GPU)の優先供給を義務付ける法案を提出したことが明らかになりました。(法案では「チップ」と記載されていますが、ここではGPUと書いています)
GPUはまずはアメリカ向けに供給を義務付ける「GAIN AI法」
この動きは、2026会計年度の国防権限法への修正案としてJim Banks上院議員によって提出された「2025年 国家人工知能のためのアクセスとイノベーションを保証する法律(GAIN AI Act)」によるものです。この法案では現状、アメリカ国内の企業や大学などが数ヶ月以上もGPUの入荷を待ち続ける事によるビジネスや研究の損失が発生していることに課題があるとして「米国の買い手に最初に購入機会が与えられたこと」「国内に未処理の注文がないこと」「輸出が国内出荷を遅らせたり、海外顧客を優遇したりしないこと」などを証明すること(実現すること)がNVIDIAやAMDに求められることになります。
想定はAI向けGPUだが、コンシューマ向けにも拡大する余地も
現時点でこのGAIN AI法の対象となるGPUは以下の3つの要件の内、どれかを満たすと対象となることが明らかにされています。
- TPPと呼ばれる演算形式(8bitなど) での計算速度(TFLOPs) x ビット数で求められた数値が2400を超える場合
- TPPをGPUのダイ面積で割った際に3.2以上の数値になる場合
- メモリの帯域幅が1.4 TB/sまたはGPU間のインターコネクトが1.1 TB/s、またはその両方の合計が1.7 TB/sを超える場合
この法案は明らかにAI向けで重宝されているHopperやBlackwell GPUなどをターゲットにしていますが、要件だけ見るとコンシューマ向けのGeForce RTX 5090なども合致しているため、仮にこの法案が可決されてしまった場合には日本を含む世界中のPCゲーマーやクリエイターが、最新のGPUを入手するまでの期間が大きく伸びる可能性が高くなります。
まだ法案段階で廃案の可能性も。NVIDIAなどは反論中
現時点でこのGAIN AI法はまだ法案であるため、このあと上院と下院で審議され、そのあと大統領による署名により正式に効力を持つようになります。ただ、NVIDIAはこの法案について「我々は、世界の他の地域に供給するために、米国の顧客をないがしろにすることは決してありません」と述べ、「この法案は存在しない問題を解決しようとしている」と強く反対する姿勢を明らかにしています。また、AMDはまだ声明を出していないものの、ビジネス面でNVIDIAと同様に打撃を受けることから反対の立場を取ると考えられます。そのため、今後NVIDIAはもちろんのこと、AMDもロビー活動などを展開すると考えられますがアメリカ第一を掲げるトランプ大統領の下でこの法案がどのように進むか、特に消費者としてはハイエンドグラフィックスカードの入手性が大きく悪化することにもつながる可能性があるため、今後の審議の行方が注目されます。
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