GPU高騰と在庫品薄問題。何が起きてるか最新情報をまとめ

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2021年に入ってからグラフィックスカードの在庫が全く無い又は価格が高騰(暴騰)という問題に直面した人たちは多いと思いますが、一体何が起きているのか、そして最新の動向について情報をまとめました。

目次

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一連のグラフィックスカード品薄の原因について

グラフィックスカードの品薄については原因は複数に渡っています。そのため、今まで見てきたニュースやテック系のサイトの情報を基に品薄の原因となっている要因を取り上げて行きます。

新型コロナウイルスで開いた供給の穴と特需

グラフィックスカードから自動車まで、半導体不足の最大原因は新型コロナウイルスである事は間違いありません。新型コロナウイルスの感染が確認された当時、中国や台湾、韓国では半導体に関係する企業のほとんどが感染拡大を防止するため政府主導または自主的に操業を一時停止する事態に追い込まれました。これにより、半導体に関わるサプライチェーンが破綻してしまいます。

また、世界各国に感染が広がると「ステイホーム」が世界的に唱えられ、オフィスワーカーは在宅勤務になり、プライベートでも家で大部分を過ごす事になります。これによって、ノートパソコンやデスクトップパソコン、液晶ディスプレイ、ゲーム機などに対する需要が過去にないレベルで増えました。

2020年のパソコン出荷台数は2億7,500万台。過去10年間で最高の成長率~Gartner調べ – PC Watch (impress.co.jp)

半導体関連企業は操業を一時停止に追い込まれるなどして、サプライチェーンに大きな打撃を受けました。そのため、操業が再開されても部材などが供給されない事態となります。そうして開いてしまった供給の穴を埋める間もなく半導体に対する需要はステイホーム需要などで大きく上がりました。

J.Pモルガンによると半導体の供給量は需要に対して10~30%下回っている状態が続いているとの事。この状態から供給面で需要を満たすまでに改善するには第一四半期から最低でもあと3~4四半期必要で最終製品となったモノが消費者に届くようになるには更に1~2四半期程度の時間が必要と試算されています。

一度開いた供給の穴は塞がれる事が無く、需要だけが上がり続ける状態が慢性的な半導体不足に繋がってしまっているようです。

半導体不足は2022年以降も続く可能性あり

中国脅威とアメリカの反抗

トランプ政権時、アメリカは安全保障上問題があるとして、中国企業にハイテク製品の製造などを手助けする製造技術や設備の譲渡は原則不許可とする方針を発表しました。ここで指す中国企業は半導体大手であるSMICが含まれていました。このSMICは半導体生産では世界では第5位に位置する大手で、GlobalFoundriesと同等レベルの生産規模を誇っています。そんなSMICですが、アメリカから実質的に締め出された事によって一部企業はリスク回避を目的ににTSMCやSamsungなどへ生産を移管する措置が行われたそうです。これによって、TSMCやSamsungに対して需要が集中し、グラフィックスカードを含め半導体製品全体の供給不足に繋がってしまっているようです。

Trump’s China tech war backfires on automakers as chips run short | Reuters

仮想通貨の高騰とマイニング

仮想通貨の高騰もグラフィックスカードの需要を押し上げる原因になっており、品薄の原因の一つとなっています。

グラフィックスカード、特にハイエンドのNVIDIA GeForce RTX 3080などはEthereumと呼ばれる仮想通貨のマイニングで高い性能を発揮する事は知られていましたが、売された当時は、Ethereumの価格は2020年10月時点では4万円でRTX 3080を買って1ヵ月連続でマイニングし続けても1kw/h 27円として電気代を差し引くと6000円程度にしかなりませんでした。

しかし、Ethereumは2020年末から徐々に値上がりはじめ、2020年12月末は4万円~7万円で推移していた価格は、2021年1月末には2倍の14万円、4月末には30万円と大きく高騰しました。このEthereum高騰によって、RTX 3080を1ヵ月稼働させると電気代を差し引いても約2.5万円程度の収益が得られるようになります。RTX 3080の定価が13万円と仮定すると、5か月弱で投資回収が出来てしまいます。

このような高い収益性に目を付けた人達が世界中でグラフィックスカードをかき集め、一部では組織的に大規模なマイニングファームまでを構築し始めました。特に電気代が安い中国やイランでは大規模なマイニングファームが複数稼働していると言われており、イランの首都テヘランではマイニングファームが原因で大規模な停電が発生しました。この時、イラン当局が調査したところ、約450MWもの電力がマイニングファームで消費されていた事が報告されています。450MWと言う数字はRTX 3080を2045個集めたのに匹敵する数字になります。

このマイニングですが、グラフィックスカードの需要を通常のゲーミング用途とは異なり、需要を継続してしまいます。原因としてはマイニングは規模に応じてより多くの収益が得られる事が挙げられます。ゲーミング用途でグラフィックスカードを買う場合、基本的にはユーザーが1つグラフィックスカードを買えば需要は消えますが、マイニングの場合では、5か月弱の投資回収の期間が終わればグラフィックスカードは利益を生む機械になります。そのため、今後もEthereumの価値が高止まりすると考えている人たちは、グラフィックスカードの在庫が出る度に追加で購入をしていると考えられています。そのため、いつまで経ってもグラフィックスカードの需要が収まる事が無いという状況になってしまっています。

転売屋の参入

高い需要がある製品に必ず出没するもの、それが転売屋です。日本では鬼滅の刃の限定グッズからPlayStation 5など人気が高い製品がメルカリやヤフオクなどに出品され多くのヘイトを集める存在となりつつあります。そんな、転売屋ですが高い需要に対して低い供給量のモノに群がるのは常で、当然グラフィックスカードにも目をています。

2021年で既に14000個のNVIDIA GPUがEbayで転売済みの模様

海外の話ではありますが、アメリカ版ヤフオク的な存在であるeBayではグラフィックスカード不足にあやかって、転売屋が1万4000個ものNVIDIA製GPUをeBayにて転売している事が調査で明らかになっています。このようにしてグラフィックスカード購入時の競争率を転売屋が存在する事で大きく押し上げてしまってはいる現状があります。

「改善の兆しなし」(4/10)・・・複数ショップ店員談 – エルミタージュ秋葉原

日本でも、エルミタージュ秋葉原の記事ではグラフィックスカードが入荷されても「巡回部隊がおり、在庫を発見次第仲間に連絡。あっという間に数人が買いに来て完売する」と書かれており、異常な状態となっているようです。(転売屋のグループとはキモイ存在ですね・・・)

優先順位の問題

半導体製品の中で最も利益を出しやすい製品はサーバー、データセンター向け製品となっており、ゲーミング向けグラフィックスカードはその次となっています。また、グラフィックスカードの中でもハイエンドほど利益率が高く、ローエンド製品に近づくほど利益率は低くなります。

一方で、冒頭で記載した通り新型コロナウイルスによって未だに供給に空いた穴が埋まらず、需要に対して供給が最大30%下回っている状態となっておりNVIDIAやAMDではすべての製品群をカバーして生産する事は出来ません。そうなると、企業としては最も利益の取れる製品を優先し、利益率の悪い製品は後回しと言う構図が出来上がります。

実際にそのことを示唆する事がNVIDIAの2020年第四四半期決算で発言されています。NVIDIA CEO Jensen氏が「ゲーミング向けGPUの出荷量は少ない」と発言する一方「データセンター向け製品では供給不足が発生しない見込み」と発言しています。

NVIDIAのQ4決算発表。GPU不足は4月まで続くと予測、通期では改善

歩留りの問題

これは、NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズに限定される話ですが、これらのグラフィックスカードの製造に使われているSamsung 8nmプロセスでは歩留りが非常に悪いという噂が絶えず流れています。

Highlights of the day: Samsung reportedly sees yield issues for 8nm process (digitimes.com)

Asus says GPU shortages could be a result of low ‘upstream’ production yields from Nvidia | TechSpot Forums

Digitimesでは2020年末からSamsung 8nmプロセスの歩留りが悪いという話は出ていましたが、2021年3月24日にASUSが行った決算発表時でも「グラフィックスカードの品薄は上流工程での低い歩留りが原因の可能性がある」と発言が出ています。

なお、リークされたTSMCの内部資料によると、TSMC 7nmの歩留りは90%であり非常に良好と言われていますが、Samsung 8nmプロセスではこれ以上に悪い事が推察されます。

TSMC 5-Nanometer Update – WikiChip Fuse

 

この歩留りですが、現在主流の300mmウェハーからRTX 3090/3080の基となるGA102 GPUは最大87個製造する事が可能です。もしTSMC 7nm並みの歩留まりである90%であれば78個ですが、もし歩留りが80%であれば69個しか製造が出来ない事になります。

冒頭で記載した通りNVIDIA GeForce RTX 3000シリーズ限定の話ではありますが、歩留りの問題と言うのもグラフィックスカード不足に拍車をかける一因になっている可能性はありそうです。

今後のグラフィックスカードの動向

生産能力の拡大を約束したが・・・

半導体製造の大手であるSamsung、TSMC、GlobalFoundriesでは高い半導体需要に対応するため、生産規模拡大に向けた投資を加速させる動きを見せています。例えば、SamsungではDRAM工場やファウンドリの生産能力を当初計画から倍近い引き上げを実施すると発表しました。また、TSMCも約11兆円、GlobalFoundriesでは1.4兆円もの金額を投入して生産規模の拡大を実施する事を表明しています。

しかし、半導体の生産規模は一朝一夕で出来るものでは無く、TSMCの生産規模拡大は約3年の時をかけて実施される事が発表されています。TSMCがアメリカで建設する予定の工場も生産開始は2024年とまだまだ先になります。

そのため、グラフィックスカードなどの半導体製品の品薄が即座に解消される見込みは薄いと言わざるを得ません。

TSMC to invest $100 billion over 3 years to meet chip demand | Reuters

GlobalFoundries pours $1.4 billion into fab expansion amid chip demand boom | Reuters

Samsungが需要の増加を受けて半導体投資を前倒し – 韓国メディア報道 | TECH+

部材不足で影響は長引く

2020年後半から2021年前半のグラフィックスカード不足の原因は新型コロナウイルスによる生産停止に伴う供給の穴が大きな原因となっていました。しかし、2021年からは供給の穴に加えて、部材不足がグラフィックスカードなど半導体製品に大きな影響を与える可能性が出てきています。

2021年春からIntel Rocket Lake CPUの出荷量は減少する可能性 – Gaz:Log

Intelでは2018年に大規模な供給不足を起こして以来、生産規模を大きく拡大しました。そのため、新型コロナウイルスによるサプライチェーンの影響は受け、供給に穴も発生はしていました。しかし、その穴をすぐに塞げるほどの生産規模を誇っておりIntel製CPUが深刻な品薄になる事はありませんでした。

そんな、Intelですが2021年春以降にかけて半導体製造に必要な部材が不足する事が4月に判明しました。具体的にどの部材かについては言及は無いものの、推察として出ているのはシリコンウェハーでは無いかと言われています。

シリコンウェハー製造で大手である信越化学工業では3月上旬にシリコン製品の値上げを発表しています。

信越化学工業株式会社(本社:東京、社長:斉藤 恭彦)は、主要製品の一つであるシリコーンについて、全製品を対象に国内外で価格改定を実施いたします。

シリコーンの主原料である金属ケイ素は、中国の旺盛な需要による供給不足と生産コストの増加などを背景に価格が上昇しています。また、メタノールや触媒原料の白金についても供給不足などの要因から価格が上昇しています。さらに、物流費や副資材などの費用も上昇しており、収益を圧迫する要因となっております。

当社では、製造コストの削減による自助努力だけでは、これらのコスト上昇分を吸収することは困難であると判断し、下記の通り価格改定を実施することといたしました。

需要家の皆様には、上記の状況をご理解いただき、販売価格の改定をご了承いただけるよう努めてまいります。

対象製品: 当社シリコーン事業本部取り扱いの全てのシリコーン製品

価格改定率:全製品10~20%の値上げ

実施時期:  2021年4月出荷分より

シリコーンの販売価格の改定について | ニュースリリース | ニュース | 信越化学工業株式会社

信越化学工業のプレスリリースの中では、シリコンウェイハーの原料でもある金属ケイ素や製造時に必要なプラチナが供給不足に陥っている事が明記されています。

今後はTSMCやSamsungでは歩留り問題や生産規模の拡大が徐々に行われていく見込みですが、規模拡大に耐えられるだけの原材料が供給できているかと言う問題に直面する可能性があります。そのため、この部材不足の問題は動向によってはグラフィックスカードの供給に大きな打撃を与えると考えられますので注視が必要な問題です。

グラフィックスカードはいつになったら買えるのか

グラフィックスカードの供給状況が近々改善する兆しは無いと言えます。歩留まりが向上しても、元々の生産規模が需要に追いついておらず、在庫として明確に増えるのは早くても1年先と言えそうです。また、グラフィックスカード以外にも自動車用、データセンター用などグラフィックスカードより優先順位の高い半導体製品の需要も依然として高止まりする見込みになっています。

ただし、グラフィックスカードの供給は増えないものの、需要が下がるかもしれないイベントが2つ控えています。もしかしたら夏ごろにはゲーミング目的であればグラフィックスカードが5月現在よりも買いやすくなっているかもしれません。

EthereumのEIP-1559導入による収益低下

RTX 3080などを活用してEthereumマイニングを行えば多くの利益だ出せると冒頭で書きましたが、このマイニング収益が大幅低下する可能性があるEIP-1559と呼ばれるアップデートが7月頃に実施される可能性があります。
現在、RTX 3080でEthereumをマイニングすると約5か月程度で投資回収、その後は月に2.5万円程度の収益が得られる状態となっていますがこのEIP-1559が導入されると収益は最大40%目減りします。

GPU買ってEthereumマイニング!は要検討。EIP-1559とETH2.0問題 

このようにマイニングによる収益が大きく低下すればグラフィックスカードはゲーミング用途とマイニング用途の2方面から需要がありますが、マイニング用途での需要を失う事になります。また、マイニング用途で使われていた中古品も投げ売り状態で市場に出回る可能性も考えられ、そのような事態になれば新品・中古問わず最新のグラフィックスカードの入手性は大きく改善し価格なども適正値まで戻る圧力になると考えられます。

一方で、このEIP-1559によってマイニング収益は低下するもEthereum価格が大きく上昇すればマイニングによる収益は十分得られる事になるため、グラフィックスカードの入手性は改善しない可能性もあります。

マイニング制限の投入

NVIDIAはGeForce RTX 3060においてマイニング性能を制限する機能を追加しました。この機能の効果は高かった模様で、発売当初はネット通販からは在庫が消えたものの、店頭では発売初日も売れ残る事態となり、ヤフオクやメルカリでも定価並みの価格で取引されていしました。

GeForce RTX 3060のマイニング制限解除は事故だったとNVIDIAが認める

しかし、NVIDIAが不本意にマイニング制限を解除するドライバーを公開した瞬間に残っていた在庫は瞬く間に蒸発し、ヤフオクやメルカリでも定価より1~2万円程度上乗せされた転売価格で売れるようになりました。

これらの動きからRTX 3000シリーズに対するマイニング需要の高さが伺えますが、NVIDIAは現在発売中のGeForce RTX 3000シリーズすべてにマイニング制限をかけたモデルを5月中旬から出荷し、6月頃からは店頭に並び始める模様です。

マイニング制限『Lite Hash Rate』搭載RTX 3000シリーズが間もなく登場 

このマイニング制限の投入によってRTX 3060の時の実績から、グラフィックスカードに対する需要を大きく低減させる可能性は高いと言えます。そのため、ゲーミング目的でグラフィックスカードを買いたいという人にとってはこのマイニング制限されたグラフィックスカードが販売される6月は、5月現在よりも容易に手に入る可能性が高いと言えます。このマイニング制限が追加されたグラフィックスカードは箱など外観からは区別がつかないため、マイニング目的で買う人たちは購入をためらう事が予想されます。

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