PCIe Gen5電源『12VHPWR』の詳細判明。対応には電源ユニット買い替え必須

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NVIDIAがCES2022にて発表されたGeForce RTX 3090 Tiで初めて搭載がされると言われているPCIe Gen 5.0電源について、その詳細情報が出現しましたが、容量増加の他に安全性や信頼性が大幅向上するようです。

目次

ATX規格改定に合わせてPCIe用電源規格にも見直し。500W超えGPUにも対応

Intel’s ATX v3.0 PSU Standard Has More Power for GPUs | Tom’s Hardware

現在、GPUなどに電力を供給する電源としては6pinまたは8pinの電源ケーブルが一般的になっていますがGPUのTDPが300Wを超える中で8pin1口で賄える電力は150Wと大きく足りない状態が続いています。これに対してIntelなどが中心となってPC電源関係の規格である『ATX規格』の改定に向けて動いており、ATX 3.0と言うバージョンを発表しました。

その中で何度か噂として上がっていたGPUに関連する電源規格であるPCIe Gen5対応電源ケーブルである『12VHPWR』の詳細な仕様情報が判明しました。

対応には新しい電源ユニットが必須の模様。GPUと電源両面の安全性が大幅向上

ATX 3.0で定められたGPUなど拡張カード用の新しい電源規格は『12VHPWR』と名付けられ電源を供給する12pinと信号情報を供給する4pinの合計16pinを有するケーブル規格となっています。

この『12VHPWR』では合計450W以上の供給が可能な電源ユニットには搭載が必須とされ、電源ケーブルは最大600Wまでの電力供給を12Vレーン経由で行うとされています。ただ、『12VHPWR』には電力供給量の増加以外にも様々な機能が追加されているようです。

電源ユニット全体のパワースパイク対策強化。(信頼性向上)

『12VHPWR』に対応するには電源ユニットでは容量以上の電力でも瞬間的には供給を継続できるような仕様にする必要があるようです。例えば、1000Wの電源ユニットの場合、100μsの間は200%の電力、つまり2000Wの供給を瞬間的に行える必要があるとの事です。また、他にも120%であれば100ms、160%は10msと各パワースパイクに対して細かく要件が定められているとの事です。ただ、現時点では電源ユニットなどに搭載されている監視用ICでは100μsの速さには対応していないと見られているため、電源ユニットの設計刷新が必要となるようです。

センサー用の4pin

『12VHPWR』では合計16pinが存在しますが、電源供給に使われるのは12pinで残りの4pinは信号用となっています。この4pin信号の内、Sense0/1と呼ばれる2pinは必須となっており、CARD_PWR_STABLEとCARD_CBL_PRES#は任意で装着する信号になっています。

Sense0/1信号(センサー用4pin)

Sense0と1は必須信号線となっており、拡張ボードに対してどれだけの電力が供給可能かをやり取りする線になっています。このSense0と1の信号状況によってGPUに供給される電力は変わるのですが、システム起動直後とソフトウェア(ドライバー)とのやり取りが開始された後で電力供給量が変わるようです。

任意:CARD_PWR_STABLE(安全性向上)

CARD_PWR_STABLEは任意の信号線になっていますが、この信号線では拡張カード側が電源ユニットに電源状況を通知するものになっており、万が一問題が発生した際には電源ユニットをシャットダウンする信号を送信する安全機能となっています。

任意:CARD_CBL_PRES# (マルチGPU環境時などでの信頼性、安全性向上)

この信号では2つの機能があり、1つ目の機能は拡張カードと電源ユニットとの間のケーブルが正しく装着されている事を示す信号で装着は必須となっています。

2つ目の機能は任意項目となっていますが、電源ユニットに12VHPWRに繋がれた拡張カードが何枚あるのか把握し、供給電力の範囲内で各拡張カードに割り当てられる電力量を調整する役割があるとの事です。そのため、例えば600WのTDPを持つGPUを2枚搭載した場合、各カードに供給される電力は300W、GPU4枚なら各GPUに150Wとシステムの信頼性と安全性を向上させる信号になっています。

何ワットまで対応するかケーブルへの印字(安全性向上)

地味に大きな変更点としては、電源ユニットに搭載されている12VHPWRケーブルに対して供給できる最大電力量がユーザーが分かるようにケーブルへの印字などが必要となるようです。この要件によってユーザーが不適切なケーブルを使う事を防止し、安全性向上を図るようになっています。

12VHPWRに対応するには電源ユニットの刷新が必要。

12VHPWRでは最大600Wの電力を供給できるという事で間違えた使用を行えば機器の故障や最悪の場合火災などに繋がるほどの電力量となっています。そのため、電源ユニット自体に課せられるスペック、例えばパワースパイク対策などの要件が大きく上がっています。また、ケーブルへの容量印字から信号線の追加など様々な安全対策も追加で施されています。

そのため、この12VHPWRに対応するには8pinを2本繋ぎ合わせるなど簡易的な措置では対応できず、ユーザーは電源ユニットの買い替え。そして、電源ユニットのメーカー側は電源ユニットの内部構造の刷新などを行う必要があります。

ちなみに、この12VHPWRに初対応すると見られているGPUはNVIDIA GeForce RTX 3090 Tiで、このGPUが発売されるのであれば、タイミングを合わせて新しい設計が施された電源ユニットが各社から登場すると見られていますが要件が厳しいことから最初は非常に高価になる事が予測されます。

NVIDIAのGeForce RTX 3090 Tiのみならず、RTX 4000シリーズやRadeon RX 7000シリーズではGPUのTDPは500W程度になると見られているため、既存の8pin電源であれば最低でも3口必要となるなど現実的なものでは無くなっています。また、このような消費電力が大きいGPUに電源分岐ケーブルを使用すれば火災など大きなリスクにも繋がりかねないため、安全性を担保する意味でも今後は400Wを超えるようなGPUには12VHPWRの導入は必須になると考えられます。

ただ、この12VHPWRに対応するには信号線の追加やパワースパイク対策などGPUと電源ユニット双方のコストアップに繋がる対応を取る必要があります。そのため、今年中に発売されるGPUや12VHPWR対応電源ユニットに関しては価格が高いハイエンドモデル中心で登場する事になると見られています。

ちなみに、エントリーモデルやミドルレンジでは今後も6pinや8pin電源が使われると考えられるため、TDP 500W程度になるようなハイエンドGPUには興味がないという方は12VHPWR非搭載の電源ユニットのままでも数年は問題ないと考えられます。

 

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