このブログで日産キャッシュカイがキャッチされさ際に欧州に2021年から導入される企業平均燃費について少し書きました。
今回はこの欧州の企業平均燃費について詳しく、そしてどこのメーカーがヤバそうなのか紹介したいと思います。かなり詳しく書いてあるのでメンドクサイ方は冒頭のまとめを読んでください。
簡単に説明します。
基本:欧州での燃費とは1km走行するのに排出するCO2の値です。〇g/kmと表現します。(ここで重要になる95g/kmを日本風で言うと24.4km/Lです)
内容があまりにもディープ過ぎるのでここではざっくりとした規制の内容と各社の現状を書きます。非常に複雑な法規で、様々な要素が絡んできます。自分もまだ勉強中の身なので違う点もあるかもしれません。
詳細な法規の説明は反響次第で書きます!
EUのCO2規制、ルールは簡単です
- 欧州はCO2の排出量を可能な限り1km辺りのCO2排出量を95gに近づけたい
- 一律95gでは不公平。重い車、軽い車あるから計算式に基づいて個別に95g相当の目標値を出すよ
- メーカーが売る車の平均CO2が目標を越えたら 超えたg数 x 95€ x 販売台数の罰金を払ってもらうね
日系メーカーはどういう状況?
2021年にどうなるかを正確に予測するのは難しいので2019年の登録車をベースにどのぐらい各社は目標値から乖離があるかを割り出します。
- 計算は簡略化のため2020年目標値であるNEDCベースで計算しています。
- 重量は2019の登録データから2%増加すると仮定(2018⇒2019では平均重量が2%増加)
- 平均CO2値は2019年のデータを持ってきます
- スーパークレジットなどは計算対象外とします
トヨタ(1台当たり5万円罰金)
目標値:94.4g 結果:99.8g 差4.4g 登録台数79万台 罰金395億円
三菱(1台当たり21.2万円罰金)
目標値:97.3g 結果:116.1g 差18.8g 登録台数14万台 罰金298億円
日産(1台当たり21.4万円罰金)
目標値:95.4g 結果:114.1g 差24g 登録台数39万台 罰金834億円
ホンダ(1台当たり33.8万円罰金)
目標値:95.7g 結果:126.1g 差30.4g 登録台数12万台 罰金405億円
スズキ(1台当たり36.2万円罰金)
目標値:82.2g 結果:113.8g 差31.6g 登録台数13.9万台 罰金502億円
マツダ(1台当たり46.2万円罰金)
目標値:94.9g 結果:135.4g 差40.5g 登録台数24.7万台 罰金1142億円
スバル(1台当たり69.6万円罰金)
目標値:102.4g 結果:162.6g 差60.2g 登録台数2.7万台 罰金188億円
結果のまとめ
データがそろっている2019年の登録車データから割り出しているため罰金が効力を発揮する2020年中の登録結果とは大きく変わっている事もあると思います。特にコロナで大型車ではなく小型車が売れるなども考えられます。
ただ、流れとしてはSUVブームである事からCO2の平均値は悪化の一途を辿っており、電動化も進んでいるものの穏やかなためこの調子で2021年を迎えると考えられます。
各メーカーについて
トヨタはHVを大量に売っているので妥当でしょう。販売台数も多いため395億円も罰金も納得ができます。ただそれでも罰金が出る厳しさとも言えます。
次点は日産と思いきや三菱。車重の割には燃費が良く、さらにアウトランダーPHEVが売れている事でこのような結果になったのでしょう。ちなみに、PHEVは低いCO2にも関わらず車重が重いため目標値計算の際に非常に有利になります。
一方のマツダは販売台数が多い割りにCO2の成績が悪く、2019年の調子で進めば1000億円の罰金は不可避です。Skyactive-XやEVであるMX-30で挽回をしたい所ですが、そんなに売れるはずもなく、CO2が少ないディーゼル需要が減っている事から挽回できるのか必見です。
ちなみに、CO2の計算する際はマツダはトヨタと一緒に計算されます。(プール制度)
それでもトヨタがマツダを無償で助けるはずもなく、500億円近いお金をトヨタに支払う必要はあるはずです。(そうしないと株主が納得しない)
スバルはどうするのでしょうか。特にマツダのようにEV発売など挽回策が無いのが非常に気になります。
従うか、抗うか、逃げ出すか
ここまで厳しい規制を敷かれてしまうとメーカーに残されているのは罰金を払うか、EV/PHEVを売りまくるか、欧州からは撤退するかの3択です。
従うか、抗うか、逃げるかです。
恐らくBMWやAudi、メルセデスベンツなどのプレミアムブランドは規制に従うより、罰金に従うでしょう。なぜなら罰金額を車両価格にそのまま転嫁することができるからです。
大衆車メーカーはそうは行きません。
多くのメーカーはEVやPHEVを出して抗おうとするでしょう。しかし、消費者が高いお金を払ってEV/PHEVを買ってもらえるかは別問題です。
ガソリンエンジンの効率化を進めるのも手ですが、SUVなど燃費に不利な車体形状の車が流行っている状態ではかえってCO2の悪化を招くと考えられます。実際に2017年から2018年ではCO2が排出量が3gほど上昇しています。
見切りの速いメーカーでは、欧州での商品ラインアップの大幅縮小や最悪の場合撤退と言う逃げの選択肢も出てきます。ただ、数十万台以上、車を出しているメーカーにとって販売会社や現地子会社を簡単に切り捨てる事ができるとは思えません。
結局、多くのメーカーが右往左往する事態が見えています。
多くの雇用を生み出す自動車業界ですが、欧州ではVWのディーゼルスキャンダルや異常気象への危機感から環境保護を訴える活動が活発化しています。飛行機に乗らないと言われているグレタさんはその典型ですね。
環境保護は確かに大切です。ただ、分かりやすいモノである車を悪者扱いし、それに便乗して政治家もわかりやすい車での規制を成果として挙げたいがために、実現のハードルが高すぎる規制を強化する現状があります。
このままこのような状況が続けば欧州で多くの雇用を生み出している自動車メーカーが、欧州から撤退や業績悪化に伴う縮小・解雇など自ら返り血を浴びる可能性がありますがその点はあまり気付いていないようです。
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